ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ31)

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０８◆「お前じゃなかったら誰なんだ？」ページ31

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暑い夏が終わり、季節は紅が彩る秋へと変わっていった。

あれ以来、怪我もなく爆豪は順調にヒーロー活動に勤しんでいた。
随分と注目を浴びるようになり、メディアにも取り上げられるようになった。
“ヴィラン顔のヒーロー”などと不名誉な煽り文句を付けられて。

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「よっしゃ乾杯といこうぜ！」
「いえーいっ！」
「お疲れーい！」

カチン、とジョッキ同士が合わさる音が鳴る。
上鳴と切島はぐびぐびと喉を鳴らしながら、一杯目のビールを飲み干した。

「ほら、爆豪も飲めよ！」
「あ゛？うっせぇ。俺は自分のペースで飲むんだよ」
「あーそう。轟はビール飲まないのか？」
「今日は車だから酒はいい」

爆豪は仕事が終わった後、上鳴たちの誘いを受けて居酒屋で酒を飲むことになった。
なぜかそのメンバーに、道で会ったという理由で巻き込まれた轟がいた。

馬の合わない相手を睨みつけるが、向こうはマイペースにメニューを眺めている。

「おーそういや轟！今日、Aちゃんとデートしてたよな。腕組んで街歩いてんの見たぜ」
「は？てンめーいつまで妹と──……」

上鳴の報告に、爆豪がいつものごとく仲睦まじい兄妹に横槍を入れようとしたが……、

「いや？今日はAと会ってねぇ」
「へ？」
「あ？」
「ん？」

メニューから顔を上げて言う轟に、上鳴、爆豪、切島の３人はそれぞれの動作の途中で動きを止めた。

「いやいやだって紅白頭の男と一緒にいたぜ？お前じゃなかったら誰なんだ？」
「……さあ？」

轟は不思議そうに首を傾げる。

「ん？ ……でも、男の方の顔は見なかったな……。てっきり轟かと。っていうか轟以外いねーじゃん」

Aの隣にいたのは轟と同じ特徴的な髪色の男。
２人のことを知っているなら当然、横にいるのは轟焦凍だと思うだろう。

「あー……ちなみに、爆豪。Aちゃんの今日の予定は？」

嫌な予感を抱えつつも、切島は勇敢にも爆豪に問いかけた。
爆豪はジョッキをテーブルに置き、口元に手を当てて考えていた。

「……ダチと会う約束があるって」
「そのお友達って？」
「……聞いてねぇ」

爆豪の顔がどんどん険しくなる。
グビッとビールを飲み干したその眉間には、それ以上増えるのかというくらいにシワが寄っていた。

「…………男、だと？」

低く呟く声には怒りが含まれていた。
余計な情報を与えてしまったと、上鳴は己の浅はかな行動を悔いた。

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