ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ49)

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　　　「……いつも言ってるだろうがよ」ページ49

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「勝己君、今日はお休みなんだよね？」
「いや、夜間パトロール」
「……え？」

てっきり非番だと思っていたのに、これから勤務だと言い出した。
時計を見れば出勤時間の１時間前であることを知り、慌ててベッドから起き上がる。

「勝己君も起きて！」

離れていったAに不服そうにする爆豪に準備するよう促した。

出勤前に何かお腹に入れておかなくては。
凝った夕食を作る暇はないので、キッチンにある食材で簡単にサンドイッチを作った。

「もたもたしてないで食べて！」
「むぐ」

Aは辛めのソースを使ったサンドイッチを爆豪の口に突っ込む。

「どう？美味しい？」
「……ん」
「よかった」

頷く爆豪に満足げに微笑み、自分用に作ったサンドイッチを口に運んだ。
時間は着々と進んでいく。
もろもろの準備を終えて、玄関で靴を履く爆豪に上着を持たせた。

「今日はもう遅いから泊まってけ」
「え……？あ、うん」

片付けを終えたら帰ろうと思っていたが、引き止められてしまった。
明日は昼からアルバイトがあるくらいなので、頷いてコスチュームが入った鞄を手渡す。

「……勝己君」
「あ？」

鞄が爆豪の手に渡ったと同時に、Aは正面から抱きついた。

「……どうした？」
「好きだよ。ねぇ、勝己君は？」
「は？」

唐突の質問に爆豪は一瞬固まった。

「……いつも言ってるだろうがよ」
「それは……っ、ベ、ベッドの中でとかじゃない……っ」

自分で言っておいて顔に熱が集まってくるのを感じた。

「不満か？」
「不満じゃないけど……」

と言いつつも、不満げな表情でぷくーと頬を膨らませる。
視線をずらすと玄関に置いてある時計が目に入った。

「……これ以上は遅れちゃうね。いってらっしゃ──」

腕を離して見送りの挨拶をするため上を向くと、唇に柔らかい感触。
軽く触れたそれは、次にAの耳元へと移動した。

「──……っ！」
「……んじゃ、いってくる」
「えっと、あの……っ、いい、いってらっしゃいっ」

耳を赤くした後ろ姿が玄関の外に消えていった。
見送るAの顔もまた、赤く染まっていた。

(ま、まさかあんなことを言ってくるなんて……っ)

その言葉が頭の中で何度も再生される。

愛してる──……

耳に残る吐息と甘い声。
薬指の感触。
どうしようもなく頬が緩む。

そんな幸せがずっと続くわけなんて、あるはずないのに──……

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