ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ25)

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　　　「記憶にねーな」ページ25

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暑い中でヒーロー活動をしたのだから、汗をかいているのは当然だ。
彼の場合、汗が個性を使用するための必要条件なのだから尚更。

しかし、やはり汗なので洗い流したい。
その気持ちも分かるので、Aは体を拭いてあげると言ったのだが、爆豪はシャワーを浴びるときかなかった。

(病院で綺麗にしてもらえばよかったのに……)

なんて文句を浮かべながら、右腕が水に濡れないように保護するためのプロテクターをつけて、爆豪と浴室に向かった。

今日は着替えがないので仕方なく服を脱ぎ、バスタオルで体を隠す。
その状態で爆豪を手伝っているのだが……、

「あ、ちょっと！」

あろうことか、爆豪はタオルを剥ごうとしてくるのだ。

「何もしないって言ったよね？」
「記憶にねーな」
「うそつき！」

嘯きながら自由な左手で怪しい動きを見せる。
それをAは氷で阻止していた。

「ほら、シャンプー流すからじっとしてて」

片手でシャワーを持って髪のシャンプーを洗い落とす。
Aが正面に回った時、爆豪の頭が前のめりに動いた。

「あっ！」

焦った声を上げるAに対し、にやりと笑う爆豪が胸元のタオルを噛んで引っ張った。
大人しくしていたので油断していた。

はらりとバスタオルは落ちていき、ふくよかな胸が弾力を持たせて姿を現した。
爆豪は目の前にある“それ”に口を寄せて──……

「勝己君！！」

Aは咄嗟に個性を発動させる。
自分と爆豪の間に氷を発生させて距離をとった。

あたたかい空気に包まれていた浴室の気温はどんどん下がっていく。
ギロリと睨みつければ、さすがにヤバいと思ったのか爆豪は目を逸らした。

「もう後は自分でやってよね」
「あ……っ！？」

Aは低い声を発しながら、シャワーを放り投げて浴室を出た。

＊

ぷんぷんと怒りながら服を着なおしてキッチンへ。
冷蔵庫を開けて材料を取り出した。

手際よく準備をしていたら、後ろから片手がお腹に周って抱き寄せられた。
爽やかなシャンプーのにおいが鼻をくすぐる。

「A」
「ふんっ」
「……悪かった」
「もう知らない。ご飯作ったら帰るから──……ん、」

ふいっとそっぽを向く。
しかし爆豪は素早く顔を移動させてAの唇を塞いだ。

「は……、ん、ふぁ……」
「ん……っ、A」

たくさん言いたいことはあったのだが、その文句は甘いキスに溶けていった。

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