ヒロイック・シンフォニー【Secret】 (ページ23)

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　　　「轟さん以外に触られたくないんですよね」ページ23

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国立大学付属の総合病院。
この国最高峰の設備と医師が揃えられたこの病院に、怪我を負ったヒーローが運ばれることが多い。

爆豪も怪我をした時は世話になっているが、入院はほとんどしない。
医師の個性ですぐに完治してもらえるから。

今回もそう思っていたのだが……──

「せめてリカバリーガールが出張から帰ってくるまで、おとなしく入院しててもらえると助かるんですけどねぇ」
「え？癒月ちゃん、いないんですか？」

透流(とおる)が口にする“リカバリーガール”。
この場合は癒月のことだ。

Aと同学年で雄英高校のサポート科に通っていた彼女は、２年前に祖母の名を継ぎ、次世代のリカバリーガールとして頑張っている。

在学中に個性の強化と医療に関する知識を身につけ、卒業後に祖母のもとで経験を積んだ。
まだまだ世間からは未熟だと言われているが、認める声も多くなっている。

この病院に勤務しており、爆豪をはじめヒーローを治癒しているのだが、どうやら今は出張で不在らしい。

「関西の方の病院へ。重症のヒーロー患者の治癒のために」
「あ、そう言えば焦凍がそんなことを言ってたかも……」

癒月はAの兄、焦凍の恋人でもある。
高校時代から付き合っている２人は、来年あたり籍を入れたいと言っていた。
幸せそうで何よりである。

その縁もあって、癒月は爆豪の治療の担当をしている。
癒月の個性があればすぐに治してもらえるのだが、今回はタイミングが悪かった。

「勝己君、入院しないとだめだよ」
「……」
「もしかして、病院が怖いとか？」
「──ンなわけねーだろっ！！」

爆豪はAの冗談にくわっと目を見開いて大声で怒鳴りつけた。
それを見ていた透流「ははは」と笑う。

「いえ、違うんですよ。ダイナマイト君はここの看護師が苦手なんですよね」
「苦手？」
「彼のファンが多くて……。皆、世話を焼きたくて仕方がないんです」
「あーー……」

納得してしまった。

「あのクソ看護師ども、着替えやらトイレやら風呂まで世話してくんだ。マジでうぜぇ」
「お世話してくれようとしてる人に対して失礼だよ」

爆豪の暴言を咎めると、ギロリと睨みつけられた。
よほど世話されるのが嫌らしい。

「轟さん以外に触られたくないんですよね」
「えっ？」
「……オイッ！！」

透流の指摘に爆豪は左手に小さな爆発を作って照れを隠した。

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