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薄暗い部屋で見えにくいゆめちゃんの顔を見て、ゆめちゃんと目を合わせ、ゆっくりと話しかける。怖がらせないよう、充分気をつけながら。怖がらせたら私の負けだ。

私が負けたら、もう二度と自分からゆめちゃんと関わらない覚悟を持ち、真剣に、でも優しく語りかける。

「そして、私と話すのが嫌だったらいつでもこの部屋から出ていいよ」

椅子から立ち上がるゆめちゃん。自分で言ったものの、流石に焦ってしまった。

「ゆめちゃんっ、御免よ!少し、少しだけ付き合ってくれ給えー!」

「太宰さんとお話しするのは好きです。でも、それとこれとは別だしっ…、」

「本当に御免ね。私の我が儘で、勝手な事言って。綺麗事を言わせて欲しいんだ。私は、君のことを心配しているよ」

ただ、「具体的に」と言われると難しいなあ、と頭を捻った。

「心配、ですか。ありがとうございます」

にこりと笑い、顔の前で手を合わせるゆめちゃん。その笑顔が本物なのか残念ながら私には分からない。

「私からのお願いを聞いてくれ給え。勿論、断っても良い。さっきのように、君のことをもっと知りたい。君が楽しい時はどんなときか教えて欲しいんだ」

「絵を描く時、人間とか風景とか、自分の好きなように作れる世界があって、凄い楽しいです」

「そうか、君の作った世界、是非見たいなあ。その世界に君と私と二人きり、なんて考えたらぞくぞくするねぇ」

「此処でもその世界でも、取り柄のない塵の自分が息をしているなんて、私は許せません」

「難しいねぇ」

怒りも悲しみも、全部自分にぶつけてしまうゆめちゃん。

私の我が儘で此処まで話を聞いて貰って、話をして貰って、物凄い感謝している。「話したら君が楽になるよ」なんておこがましいだろう。

自分からお願いした癖に、まるでそれが自分のお陰だというように話すのは、なんと可笑しいんだ、と私は思っている。

「少し例え話をしようか」

ある世界に、子供が居た。大勢居る子供の中の、1人の子供。

その子は、優等生だった。学校の成績は上位10%以内に入り、生徒会にも所属していた。

そして、弟に教える為に勉強し、弟の為に必死でアルバイトをしている。

弟は、その子の事が大好きだった。でも最近忙しく、勉強を教える暇も、一緒に遊ぶも無い。

学校とバイトで、まともに睡眠もとれない。痩せていき、体調も良くない。それでも家族、友達、先生、バイト先の人、誰にも心配かけてはいけない。迷惑かけてはいけない。

・→←8 『ある世界の子』


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作者名:るるる様。 x他1人 | 作成日時:2023年5月7日 11時

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