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8 『ある世界の子』 ページ9

※閲覧注意!!
不快表現かなり有り!


「ゆめちゃあぁぁん、来てくれ給え!今すぐにいいいいっ」

夕方、大声でゆめちゃんを呼んだ。珍しく国木田君に怒られることは気にせずに。

大事な大事な話があったのだ。

「私は天才だよ、ゆめちゃん。究極のスープを完成させたんだ。是非君に飲ませてあげたいのだよ」

「そんなに美味しいなら、飲ませて」

興味津々な鏡花ちゃんが、カップを持って近寄って来た。

「良いとも」

「うん、究極は大袈裟だね。ただのオニオンスープ」

「大袈裟」という鏡花ちゃんも、美味しかったようでもう一杯飲んでいる。

「大事な話って、また『キス』とか『結婚』とかだろう。殴るぞ、太宰」

「違うよ、仕事の話。それに、ゆめちゃんに休息を与えてあげないとでしょ?」

「まぁそれもそうだな」

私を殴る準備をしていた国木田君を回避し、ゆめちゃんと話をするため二人きりになれる場所を探した。

「お待たせしました」

「ゆめちゃん、見てくれ給えこの究極のスープ。ご馳走するよ。それと書類が沢山あってだね、一緒にやってくれないかい?」

「はい」

よし、作戦通り。なんと今、私の仕事部屋へゆめちゃんに来てもらうことに成功したのだ。

「書類は後回しにして、まずは話をしようじゃないか。折角二人きりなんだ。」

面倒臭い書類は机の上から下ろした。まず私は、ゆめちゃんと話したかったのだ。

「ではゆめちゃん、単刀直入に聞こう。長い話は面倒臭いからね。オニオンスープは好きかい?」

「好きです」

「それは良かった。では2問目、好きな食べ物は何かな?」

「果物が好きです」

「ふむふむ。3問目、好きな事は何かな?」

「探偵社の皆さんとお話することです」

「嬉しい事を言ってくれるねぇ。4問目、ゆめちゃん、君は自傷行為、リス&トカットをしているね?」

茶番はここまでだ。ゆめちゃんは動揺するわけでも、泣くわけでもなく、ふっ、と笑顔になり頷く。

「ビンゴ、か」

私は独り言のように呟いた。

「呆れたかい?」

「やられ、ました…」

私の口からそんな言葉が出るとは思っていなかったゆめちゃんは、反射的に笑ってしまったのだろう。ゆめちゃんに何かを感づかれないよう、充分に配慮したのだから。

「まずは言わせて貰おうじゃあ無いか。偉そうに褒めたりはしないよ。私は、君のことを大切に思っている。そして、君のことが大好きだ。少しだけでも、覚えておいてくれ給え」

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作者名:るるる様。 x他1人 | 作成日時:2023年5月7日 11時

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