あ の 娘 に 勝 て な い ！【短編集】

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em「子供、お好きなんですか？」
『はい。子供は国の未来であり宝です。…私達がしっかり守り、教育し彼らが望む未来を掴ませる義務がありますから』
em「私も全く同意見です。」

彼女…Aさんの本の貸し出し作業が終わっても、小難しい話は終わりを迎えそうにない。私と彼女は思いの外話が合うようだ。それに彼女の確かな知識からなる思想はとても聞いていて面白い。これは…グルッペンさんや薬理の先生方も交えてお話してみたい。

em「そろそろ休憩を取ろうと思っていたのですが、お時間あればコーヒー、飲まれていきませんか。貴女の話はとても興味深いです。」
『お邪魔でなければ、是非。私も司書さんのよく読んでいらっしゃる歴史書のお話を聴きたいです。血生臭いお話が苦手で本が読めないのですが興味はあったので。』
em「！はい！勿論。」

彼女を奥の部屋の私専用の書斎に招き入れ私は早速コーヒー豆をコーヒーミルで砕く。書斎には戦争や戦車、空母ばかりではなく小説や哲学書、全て私の趣味の本が立ち並ぶ。

em「どうぞ。」
『いただきます。…これは…とても美味ですね。酸味が少なくて…深煎りのものですね。香りが深くて後味がすっきりしていて飲みやすいです。』

コーヒーをお互い一口飲む。彼女の口に合ったようで良かった、と思いつつそのままコーヒーの話題から始まり、本の話に花が咲く。

会話の最中にも彼女の豊富な知識や頭の回転数以外にも作法や気遣い、仕草等からも上品さが出ている。気付けば私は彼女の蜘蛛糸に絡め取られた蛾のように心をがっしり持って行かれたようだ。

気付けばもう日が暮れていた。司書の代わりは同僚の司書であるオスマンさんが務めてくださっていたようで、「こんどスイパラ奢ってや」と、ニコニコしていた。…私の財布が軽くなりそうで恐ろしい。

em「すみませんこんなに話し込んでしまうとは思わず…」
『いえ、とても有意義でした。是非またお話出来たら嬉しいです。なかなか知識をアウトプットする機会が無いもので』
em「わ、私からも是非お願いします！！」

落ち着いた彼女とは逆に慌ててしまう私を彼女は複数ある腕の2組目の両腕の手で口を隠しクスクス笑う。指の間からは蜘蛛特有の牙が覗く。

私は多分この先、弱肉強食の摂理通り彼女に知識も大人の余裕でも勝てる気がしないが、弱者でもこの恋に喰われぬよう精一杯足掻いて見せようじゃないか。

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