冥府の南瓜 ページ14
まどろみの中に漂っていると、急に体が引きつけられる感覚があった。
j.ln「マリちゃん。」
『…蘭たんさん…？』
目を覚ますと、前と同じ魂の分かれ道に立っていた。
j.ln「思ったよりお早い帰還だったね。」
『私、………』
j.ln「大丈夫、まだ死んでない。今手当を受けている状態でだいぶ危ないけど、まだ死亡が確定したわけじゃない。」
蘭たんさんはよっこいしょ、とあのベンチに座った。
私も隣に腰掛ける。
j.ln「ずっと君のこと見ていたよ。……いやセクハラとかじゃなくて。」
『ふふ、はい。分かっていますよ。』
慌てた蘭たんさんは安心してふう、と息を吐く。
j.ln「君を刺してしまったあの…ぐちつぼ君、今大分塞ぎ込んで病んじゃってるんだ。あっちに戻ったら慰めてやってよ。らっだぁさんもだいぶ精神参っちゃってるみたいだし。」
j.ln「あ、そうだ。長靴さん元気？」
『父を知っているのですか？』
j.ln「君が生まれる前からの知り合いだよ。あの人もよく死にかけるからここにすっごいペースで迷い込んでたよ。最近…ここ十数年はめっきり来なくなったけど。
君を守るには生き残らなきゃだからね。」
『そうなのですね…』
父の昔の事は随分前、まだ私がにゃうにゃうとしか喋れなかった頃にお母様から聞いた事がある。狡賢くて敵をよく作るやんちゃな坊やだった、とお母様はよく話していた。
j.ln「………マリちゃん。君はもうそんなに寿命も残ってないのはわかるかい？」
『はい。父から以前から聞かされていましたから。
"赤猫はどんどん子孫を下に降っていくと魂を燃やす炎が力を増すけれどそれは自分の命を燃やして輝く"
なんて言っていて。幼い頃はわかりませんでしたけれど、蘭たんさんに私の魂の炎について聞かされた時には察してました。 』
j.ln「…うん。君は赤猫夫婦の一人娘だからその侵食も群を抜いて速いね。魂が燃え尽きて死んじゃったら直接神の居る場所に沈むからもう僕に会うのはこれが最後かも。」
蘭たんさんはカランと南瓜ランタンを揺らす。その顔は少し寂しそうだった。
『…私、蘭たんさんに会えてよかったです。』
j.ln「待ってそんな事言われたら俺泣いちゃうから！
…僕もマリちゃんと会えてよかった。
君が誰かに殺されるなんて見たくないから絶対生き延びてね。危ない時はこの大穴を抜け出してでも助けに行くからさ。………さぁ！起きる時間だ！また会える事を願ってる。」
蘭たんさんは笑い、南瓜の輝きを強めた。
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作者名：その辺の夢女 | 作成日時：2023年7月31日 14時
