ロスト ページ30
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本能に身を委ねてはや一時間ほど。
気づけば辺りは血で鉄臭かった。
斧についた肉片。全身に浴びる返り血。
屋敷にいた一族全員を殺し終えた。そう。殺した
『おに、ちゃ』
斧を落として涙が乾いた兄を抱きしめた。
鼓動が動いているといいな、そんな希望を抱きながら。
そんなもの幻想でしかなくて動いてもいなければ
もう、抱きしめてもくれない。
私は初めてすべてを失った。
家族を、大事な兄も。
ぶらりとぶら下がる手を必死に握っても握り返してくれない
「ッ、こ、これは」
『！！！.....だれ』
「....まさか、これをすべてあなたがッ」
後に、孤児院のシスターになる人だったんだ。
私は正義の名のもとに、正義の鉄槌を下しただけ。
私は悪くない。
兄を殺したのが悪かった。
だから全員ぐちゃぐちゃに殺した。
許せなかった。
勢い余って、私は母の目を食べてしまった。
『...おにいちゃんが』
シスターは黙って理解してくれた。
私のためにこの先を考えてくれた。
だけど私はただ兄から離れたくなかった。
大好きな兄から。
同じ、同じ曼珠沙華から生まれた兄を。
顔が全く同じな兄を。
数時間後、シスターはまた私を訪ねてきた。
シスターはあるものを握ってた。
「これに、お兄さんの血を入れなさい。入れた瞬間から、その体はお兄さんではなく、この血がお兄さんになる。」
『何言ってるの...おにいちゃんはここ！』
「お兄さんの亡骸を持ち運ぶわけには行きません！お兄さんはお墓に埋め、お兄さんの血を、肌身離さず持ちなさい。」
「亡骸を持つ人間よりよっぽどマシでしょう。」
シスターの考えに悩んだが、私は分かったとしぶじふいった。
斧で兄の腹を少し刺すと口から血が逆流してきた。
そこから血を流し入れ、フタを閉じてシスターに見せた。
「紐を通します。貸しなさい」
『....ん..』
やはり、あの時の私はまだ離せず兄を抱きしめていた
「はい。これで貴方のそばにずっとお兄さんはいるでしょう」
その日から私はシスターの孤児院にお世話になっていた
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作者名：憂鬱 | 作成日時：2019年3月10日 22時
