【104】尋ねられるのは、荷物をおいたあとで ページ4
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A「……ん…っ……」
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何処に旅行に行くの？ってくらい大きな彼の鞄。
それをわたしが持って、彼の後ろをついて部屋まで送る。
(だって手ぶらで付いて行ったら変だから)
エレベータを降り、廊下を歩く時はその撫で肩の後ろ姿の後ろをついていって。
玄関に入って。
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A「お荷物、ここにおきますね」
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玄関先に荷物をおいて顔を上げると─────その時にはもう、あの綺麗な顔が近くにあって。
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櫻井「ん♪」
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顎で「ホレ」、と指示されると、わたしはくっついていた上唇と下唇を引き離し、小さく口を開ける。
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A(あ)
A(赤い……)
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ツヤツヤでぷるんとした唇。
そして薄く開いた唇の中にのぞく、赤い舌。
薄暗い電気の灯りの中でも、やけにそれが目立って見えてドキリとする。
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櫻井「♪」
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彼は、ゆっくり感触を確かめる様にわたしの上唇を２、３度啄むと─────舌を挿し入れて。
何度しても慣れなくてビクリと肩を震わすわたしをみて満足そうに小さく笑うと、ガッチリと。
腕をわたしの腰に、肩にまわしてホールドして、好きなように一方的に口づけた。
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A(……逃げないのに…………)
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そんな事、しないのに。
痛いくらいに締め付ける腕の力も気にならなくなるまで、時間はかからない。
脳の一部から融けていってるんじゃないかっていうくらい、何も考えられず。
身体の奥がきゅん、と締め付けられる様に疼く。
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A(あ)
A(気持ちぃ……)
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もっと、と思うけれど、自分からはシない。
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A(だって)
A(だってこれは仕事)
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残った理性をかき集めて、わたしはされるがままになる。
そんな中。
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櫻井「…よ……？」
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唇を付けたまま、彼が言った。
融けた脳では考えられなくて、わたしは「え？」と聞き返す。
すると彼は、ニヤリと笑って。
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櫻井「小津さん……って、呼んでもいいよ？(笑)」
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口角を上げて、意地が悪そうにそう言われて。
わたしは最初、何を言われているのか─────理解できなかった。
驚いた顔をしているであろうわたしに、彼は。
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櫻井「今日、何の話してたの？」
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と尋ねたくせに。
その後答える隙を与えず、また唇を重ねた。
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作者名：１２（とうふ）
| 作成日時：2014年1月31日 5時
