【125】寂しくなるのは、一線引かれたあとで ページ25
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櫻井「…………解った、じゃあ今日はここで」
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何か考えが纏まったのか。
彼はそう言うと、ニッコリと─────仕事でするみたいな笑顔でわたしにそう言った。
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A(あ……)
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胸が、痛む。
だって彼の笑顔が、優しくてかっこよすぎて。
わたしが知ってる、ちょっと意地悪だったりする、照れて笑ったりするようなそんなんじゃなくて……「仕事でするみたいな」じゃなくて、本当に、本当に「仕事」をしている時の彼だったからだ。
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櫻井「じゃあ……えーっと、明日の予定はなんだっけな……」
A「……っ、」
櫻井「あ、そうだ(笑) 明日昼からだ。昼一番でロケ入ってて……あ、メシ食う系のやつだから、腹は空かせておくのが吉ってパターンね！」
A「あの！！」
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いつもなら、わたしじゃなくても、他の誰にでも。
何か言いかける素振りでもしたら一度言葉を切るのに、彼はあくまでも優しく。
ちょっと面白可笑しい事でも言うように、話を続けて。
わたしは思った以上に大きな声で、話を遮る事となった。
その声で、彼の大きな目が大きく見開かれる。
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櫻井「…………っくりしたぁ……」
A「あ……す、すいません……」
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言いながらわたしは車を降りて、彼の(無駄に大きな)鞄を「お持ちします」と言って、強引に取り上げた。
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櫻井「え、いいよ？別に」
A「いえ」
櫻井「いや、五宮さんも今日は色々あったからさ……疲れてんじゃないの？ 俺、別にそこまでわがままなタレントじゃねぇと思うんだけど(笑)」
A「…………。」
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やっぱり……
やっぱり、何処か可笑しくて。
気を遣っているというか、一線を引いているというか。
なんだかそれが寂しくて……わたしは返事もせずに、その事には触れずにわたしはいつもは彼の後ろについて部屋まで送るのに、今日はわたしが前に立って彼の部屋へと向かった。
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櫻井「…………。」
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エレベーターに他の乗客はいなくて、機械音だけ響く。
制御盤の上についたモニターをチラリとみると、やっぱりかれは指の腹で唇を撫でていた。
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♪
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エレベーターがついて、「どうぞ」と促すと─────彼は「ありがとう」と、にこやかに笑った。
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A(いままで)
A(「ん」くらいしか言わなかった癖に……)
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そんな、小さな小さな違いが妙に寂しくてなって、唇を噛んだ。
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作者名：１２（とうふ）
| 作成日時：2014年1月31日 5時
