【89】機嫌がよくなるのは、悪だくみのあとで ページ39
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A「…………下らない事言ってないで、」
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「待ってますよ、スタッフが」、といったけれど。
彼は「はいはい」、と返事だけはいい返事で磨かれた靴に足をいれる為、上がり口に座った。
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A「……あの」
櫻井「んー？」
A「その顔、やめてくださいね」
櫻井「その顔ってどの顔よ(笑)」
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「俺別に、マスクとか付けてる訳じゃねぇから変えらんねぇんだけど(笑)」と冗談めかして、彼は笑った。
だけど、解る。
明らかに機嫌が悪い。
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A(面倒くさいなぁ……)
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昔の男の話なんて、自分で振った話題だろうに。
大体この年なのだ。
何かしらの経験があって普通で、無い方が珍しいでしょうに。
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A「いい加減にしてくれませんか。他の人が仕事やり辛いんで」
櫻井「だーいじょうぶ、わっかんないって(笑)」
A「嵐さんは解るんじゃないんですかね？」
櫻井「あー…そうね。あの人たちはね(笑) つーか何、機嫌いいのもおかしくね？」
A「機嫌いいのは、別にいいんじゃないんですか？ 間に合わないと思ってたネクタイが間に合って『あーよかった！』……的な」
櫻井「あーくっそ……」
A「聞いてます？」
櫻井「聞いてる聞いてる」
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「革で紐靴ってほんとヤダ」と。
「衣装じゃなきゃ絶対履かねぇわー」とか。
そんな子供みたいな事をいいながら屈んで、紐を緩め、またそれを結ぶ。
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A「あの」
櫻井「んー？」
A「いい加減、機嫌なおしてくれませんか」
櫻井「(笑)」
A「……『翔くん』？」
櫻井「！」
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驚いた様に顔を上げた彼が面白くて、思わずプッと笑ってしまう。
それを聞いて「しまった」、みたいな顔を一瞬して─────わたしは、クスクスと笑いながら謝罪をくりかえした。
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A「ごめんね、翔くん」←ニヤニヤ
櫻井「〜〜〜〜〜あーあーもういいから！」←やられた、とか思ってる
A「でもまだ怒ってるし？」
櫻井「しつこいな！怒ってねぇっつー…あぁ、いや……」
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靴に足をいれた彼が。
さっきは見下ろされていたのに、今度は低い姿勢から見上げられる。
そうして。
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櫻井「Aがキスでもしてくれたら、機嫌なんて簡単になおるんだけどな」
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悪い事でも思い付いたみたいに、さっきと同じように口角をキュッとあげて。
でも今度は楽しそうに─────そう、言った。
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作者名：１２（とうふ）
| 作成日時：2013年11月29日 2時
