【79】謎を口にするのは、酷い言葉のあとで ページ29
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A「……嫌なんです、職場恋愛って」
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「だって、色々気になるじゃないですか」、というと「あー、確かにね」と。
自分から聞いてきたくせに、タヌキは大して興味なさそうにそう言った。
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櫻井「あれ？でもあれでしょ？ 小津さんとは付き合ってたんでしょ？」
A「……です、けど…………」
櫻井「だよね？」
A「でも、小津さんだけだし」
櫻井「あ〜〜〜…それで？」
A「それで……何ですか？」
櫻井「いや……何ていうのかなー。 普通は職場の人間と付き合わないんだけど、付き合った小津さんは特別……みたいな」
A「…………あー…」
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それは、ある。
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櫻井「だから─────その恋が、最後の恋だと思ってたのに？ みたいな？」
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クスリ、と笑ったタヌキの眉は、下がってはいなかった。
でもいつもみたいな、小馬鹿にした感じでもない。
何と言ったらいいのか解らなくて、わたしは特に好きでもない焼酎のお湯割りを、喉に流した。
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A「…………さっきから、何ですか。その、最後の恋って」
櫻井「え、ちょっと待ってよ(笑) アナタが言ったんでしょうが(笑)」
A「わたしが？」
櫻井「そう。こないだ、酔っぱらった時に」
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タヌキは─────彼は。
打鍵していた指をとめ、眼鏡をとると。
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櫻井「─────最後の恋は、いつどうやって始まるの？」
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……と。
「って、さっきも言ったけど、アナタがそう言ってたよ(笑)」と。
まるで、ドラマや映画のセリフを言うみたいに、形のいい唇でそう紡いだ。
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櫻井「まぁ、確かに謎ではあるよね」
A「謎……？」
櫻井「だってさ、恋をするのは簡単だけど─────それが最後かどうかなんて、解んない訳じゃん」
A「…………普通は…」
櫻井「ん？」
A「普通は……進行形のそれが、最後だと皆、思ってるんじゃないんですか？」
櫻井「でしょうね(笑)」
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「まー、なっかなかそうはいかないのが現実なんでしょう」と、一人で勝手に納得すると、外して一度置いた眼鏡を、彼はまた手にとった。
─────そして。
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櫻井「まぁ……最後の恋だからって、それが成就するモンとは限らないしね」
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と。
サラリとそんな酷い事を言った。
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【80】本当に恋が終わるのは、受け入れたあとで→←【78】お湯割りの焼酎は、インスタント麺のあとで
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作者名：１２（とうふ）
| 作成日時：2013年11月29日 2時
