【62】お水を飲むのは、キスのあとで ページ12
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A「……の、」
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明日。
明日……は、なんだっけ……
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櫻井「ん？」
A「……したの、スケジュー…はぁ……」
櫻井「はいはい、明日のスケジュールね(笑)」
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いつもの様に、明日のスケジュールを言う前にタヌキの声で再生される。
それが正しいのかどうかを確認できる程、頭のメモリは残っていないけれど、いつもと同じ手順を踏んだ事で取りあえず、わたしは満足した。
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櫻井「さってと……」
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そんな声が聞こえたかと思うと、グイッと柔らかいベットに俯せで押し付けられる。
痛くはないけれど「せっかく気持ちがいい所だったのに何すんのよ！」と、そんな風に思う。
─────身体も、口も動かないけれど。
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A「ん……」
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だけどそう思ったのは、最初だけだ。
多分、ジャケットを脱いだんだ。
胸周りの締め付けがなくなって、身体が楽になる。
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櫻井「水飲むむ？」
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コトリ、という音と一緒にそんな風に尋ねられたけれど、返事をするのも億劫だ。
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櫻井「飲んだ方がいいよ。 飲める？」
A「ん〜…」
櫻井「飲ませてあげよっか？」
A「…ん」
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返事に意味はない。
耳に届いている言葉も、ぼんやりそう言っている様に聞こえるだけで、言っているのが誰なのかも、怪しい。
だけど。
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A「あ……っ」
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グ、と身体を反転させられると同時に。
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A「ん、ん……っ、ンっ……！」
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唇に柔らかい感触があたって。
その後、水が流れ込んできて─────反射的にわたしはそれを飲み込んだ。
ほんの少し唇から零れた水が、そのまま滴って喉を濡らす。
だけど、それも一瞬で。
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A「あぅ……っ」
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生温かで柔らかな感触が、喉を這って、その水分を拭き取るように舐めとった。
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櫻井「もっと？(笑)」
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あぁ、なんだっけな。
これ……
これ、どこかで記憶にあるんだけど…….
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A「…っと……」
櫻井「水が？キスが？」
A「……っちも」
櫻井「りょーうかい(笑)」
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水と一緒に入り込んだ舌が、舌を舐める。
その後口から零れたお水を、また─────舌が舐める。
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A(きもち、ぃ……)
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段々お水で濡れていなくても、舌が肌を撫でて。
このまま融けてしまうんじゃないかというくらい、気持ちよく─────わたしは柑橘系のその香りに、浸った。
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作者名：１２（とうふ）
| 作成日時：2013年11月29日 2時
