違う、そうじゃない。【影山飛雄】

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朝。いつもの時間に家を出ると、家の前に飛雄くんが立っていた



｢えっ、おはよう飛雄くん｣


｢Aさんおはようございます！！｣



よく私の家知ってたなぁなんて思っている私と、元々口数の少ない飛雄くん



そりゃあ、無言も続く




気まずいなぁと思いつつチラリと視界を飛雄くんの方に向けるとなんとまぁニヤけているわけで。しかもその笑顔のまあ恐ろしいこと



なんだか見てはいけないものを見たような気分になってバッと急いで目をそらし、話題を探すためにまだ完全には醒めていない頭をまわす



｢あ、あのさ、好きな楽器、何!?｣


その場の気まずさを凌ごうと思ったけど、話題のチョイスをミスってしまったあぁ!!


いつまで私は吹部気分なの。あ、なんかラッパーっぽい


飛雄くんを見ると、私の愚かな質問にも一生懸命考えてくれていた。優しい




｢カスタネット、すかね｣

｢おぉ、定番!!｣




｢あとはマラカス｣



ま、マラカス…!!?


割と意外だった。タンバリンとかトライアングルとか来るかなって思ってたら、マラカス。
飛雄くんが一生懸命マラカス振ってるの想像したらめちゃくちゃ面白い。今めちゃくちゃ爆笑したいけど、朝だし近所迷惑になるのは嫌だから頑張って堪える


｢いいねっ…!!｣

｢俺、未だにカスタネットはたまに叩きます｣
｢叩くの!?｣
｢はい、見つけたら。母親が何故か保管してててて、それが机のひきだしの中に入ってるので、そのひきだし開けたらついでに叩きます｣
｢そうなのねっ…!!｣
｢ちなみに、Aさんは何が好きですか？｣


私は…中学の時に吹いてた楽器とは違うけど

｢クラリネットかなぁ｣


あの柔らかい音が好きなんだよね






｢クラリ熱湯!?お湯ですか!!?｣
｢クラリネッ『ト』!!!｣


それ言ったらカスタネットだってカスタ熱湯じゃん!!まずクラリ熱湯って何!!?

｢クラリ熱湯てなんすか｣


｢クラリネットね。えっとねえ…｣









変な会話だったけど、朝からすごく楽しかったし、もう飛雄くんを怖いだなんて全く思っていなかった

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