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数々の優秀なフィギュアスケート選手を育てたロシアのあるスケート場で
外は吹雪というのにそれに負けず室内では怒声が響き渡っていた。
「ユーリ!お前までなぜ日本にいっとるんだ!
_____シニアデビューを控えた大事な時だと分かっとるのかああ!」
スケートリンクど真ん中で怒りを爆発させるヤコフ。ブチッと切られた電話を握りしめわなわな震えている。
思わず頭を抱え込んでしまいそうな状況に
ヤコフはまず冷静さを取り戻すため選手たちから離れ、廊下に設置されている自動販売機を目指した。
角を曲がろうとしたとき
突然ペットボトルが目の前に現れた。
一瞬、
浮かんでいるようにも見えたそれにヤコフは心臓が止まりそうになったが、
よくみると白い手がペットボトルをつかんでいる。
「久しぶりです」
聞き慣れた声にヴィーチャを思い出したが、奴は日本だ。つまり、ここにいるのは……
「Aか……?!」
「はい、そうです」
角から姿を表したのは
黒コートにサングラスをかけた銀の長髪男。
「相変わらずお元気ですね。
声が入り口まで響いてましたよ」
「…………このばかもんが!いままで連絡も寄越さないでどこにおった」
そんな言葉を華麗にスルーし、にこやかに
これどうぞ、と差し出されるペットボトルを「驚かせるな」と文句言って受けとる。
「ヤコフさんも大変そうですね」
なんてクスクス笑っているこの男は昔と少しも変わっていなかった。
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作者名:砂雅 | 作成日時:2016年12月18日 15時