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おまけ ページ21

「あ……」


「うーん?どうしたのぉ?」


勇利はAさんに抱きついていた。


コーチであるヴィクトルと双子なのにどこかまた違った、切ないような大人びた微笑みをするAを勇利は好きだった。

ほんのり香る柑橘は勇利の実家の温泉にあるシャンプーで

Aが自分と同じ香りであることに内心嬉しく思う。


「うふっ」

酔っていても理性が飛んでいるわけではないから、勇利は様子の変わったAに首をかしげた。

微かにAさんが震えてる……?

え、僕が泣かせたの?
不安になって顔をのぞき込むと


「うふふ、うふふふっ」

不気味な笑い方で口角が片方だけ上がっているAさんをみた。



「え……」


「あはは、……ねぇ勇利」



"君はボクをどう思ってるの?"


手を勇利の顎にかけて吐息がかかるほど近くに寄せたAの整った顔を

勇利は脳内処理が追い付けずに見続ける。


え、なんで。
こんな大胆な行動をAさんが?
……酔ってるの?
でもでも、Aさんはお酒酔わないって_____





「ユウリっ!Aを捕まえて!」


勇利を現実に引き戻したのはヴィクトルだった。

「Aはコーラに酔うんだ!
昔もそれで暴れたことがある!!」


面白いほどに血の気がひいて真っ青になったヴィクトルは先ほど酔いつぶれたと思えない位に俊敏な動きで、Aを拘束しようと襲いかかる。


「あら?ボクを捕まえたい?
ヴィクトルっていつからそんなに人を縛る嫉妬深い男になったの?」


笑いながらヴィクトルの襲撃を避けたAは宴会場から飛び出す。


「A!」


え、え、話がついていけないんですけど!

とりあえず自分も追いかけた方がいいのかなと立ち上がったが
ユリオがいないことに気がついた。

ピンときた勇利は手元の携帯をとってユリオにかける。

「もしもし!ユリオどこ?」

『あぁ?なんだよカツ丼』


「今どこ?!」

『……買い物の帰りだけどよ。
それがなんだぁ?』

「じゃあAさん捕まえて!」


『はっ、意味わかんねぇし』


「Aさんが酔ったの!だから……」


『はあ!?マジかよ』

ぶちっと切れた電話。
きっとユリオはこれから全速力で帰って来るに違いない。


「あ、眠いかも……」

安心して薄く微笑むと勇利は電池が切れたように畳に倒れこんだ。



その後汗まみれで帰ってきたユリオがAさんの首に手刀を入れて

Aさんの暴走を止めたらしかった。

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作者名:砂雅 | 作成日時:2016年12月18日 15時

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