# ページ48
◎よこやまさん
去年の大晦日。
晴人が救急搬送され会場に残された俺らは、どうにかライブを開催できるよう急ピッチで演出を考え直した。
ファンにはいつ知らせるのか。
いっそのこと中止にするべきなのか。
混乱とショックで頭が真っ白になりながら、それでも俺らはファンの期待に応えるべくライブを決行した。
終了後はメンバー全員抜け殻みたいになってたっけ。
突然の出来事に誰もが平常心を保つことができず、ただただ晴人の無事を祈ることしかできなかった。
「晴人、去年の大晦日のこと覚えてる?」
『うーん、なんか、去年のことは全然、もやがかかってるみたいで、うまく思い出せない。』
「そっか。」
『ごめんね。』
「ええよそんなん。晴人が無事やったから、安心した。」
晴人が倒れた原因は薬の過剰摂取。
後から聞いた話によると、なんと一ヶ月分の薬をライブ当日に一気に飲んでしまったそうだ。
救急搬送があと少し遅ければ、命に関わるところだったらしい。
「…いつから、心療内科通ってたん?」
『えっとね、去年の夏かな。』
「一人で、行ってたん?」
『おん。兄ちゃんに行けって言われて嫌々行ってた。だから薬もほとんど飲まんと溜めてたし、お医者さんの言うこともほとんど聞いてなかった。』
「ははっ。晴人めっちゃヤンキーやん。」
『せやねん。すごいやろ。』
2010年の夏。そういえばその時ちょうど晴人はドラマに出てたっけ?単独で初めてドラマに出るって言って、暇さえあれば台本を熱心に読み込んでいた。
周りから見ると、本当に普段と変わりがなかった。
ちょっと元気ないかな、とか
前より痩せたかな、とか思ったこともあったが
ほぼ毎日一緒にいるせいで俺らはその些細な変化に気づいてやることができなかった。
『横山くん、心配かけてほんまにごめんなさい。』
「もう、お前は何回謝るねん。」
何回も謝る晴人を見ていると、なぜか笑みがこぼれる。ほんまにこいつ、素直な奴やなって。
「これからはちゃんと素直に言うんやで?時間かかってもさ、晴人の気持ちが落ち着くまで待つから。」
『…うん。努力する。』
晴人だけじゃない。
これからは俺らも、晴人が自分の気持ちを言いやすい環境を作れるように努力しないと。
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donco(プロフ) - SEIさん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです〜! (2021年1月30日 17時) (レス) id: 29bbb7c934 (このIDを非表示/違反報告)
SEI(プロフ) - 更新お疲れ様です!とても読み応えのあるストーリーで、お気に入り登録しました!無理のないペースで、更新楽しみにしていますね! (2021年1月26日 15時) (レス) id: fb017ffbce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さざ波 | 作成日時:2021年1月23日 1時