検索窓
今日:18 hit、昨日:11 hit、合計:59,208 hit

daily.5 ページ19

◎まるやまさん

−−−−−−−−−−−−−−−−



『ほんっまにあのとき、めちゃくちゃ恥ずかしかったんやから!急に丸ちゃんおるし、でっかい花束抱えてるし。』


良い感じにお酒も回り出した頃。
話はあの卒業式の日の話題になっていた。


「いや〜ほんまは喜んでもらえると思っててんよ。やのにあんなに怒られて。ちょっと凹んでんで?」



晴人の卒業式に突然僕が現れたエピソードはもはや俺たちの間で鉄板ネタ。
色んなところで笑い話になっていた。



ワインをひと口飲んだ晴人は、少し微笑みながら俺のほうを見る。



『でもな、ほんまは嬉しかったよ。あのとき、まだメンバーともちょっと距離あったし。まさか、卒業式のこと覚えててくれてると思ってなかったから。』


あれ、なんだか今日はスイッチが入っているのか。素直にすらすら話し出す晴人くん。



『あのとき一緒に門まで送りにきてくれた友達、今でも付き合いあるねん。あいつら、同じ放送部のメンバーでさ。』

「え!晴人ちゃん放送部入ってたん!?」

『あれ、言ってなかったっけ?まあデビューしてからはほとんど幽霊部員やってんけどね。』


10年以上経った今、初めて知らされる真実。
そんなん、聞いたことなかった。


「あの子たち、良い子そうやったもんね。」

『せやねん。昼休みとか、関ジャニの曲とかかけてくれてたらしいし。』


少し上を見ながら、当時を思い出しながら話す晴人。


『当時、ライブに出るたび暴言吐かれて、おまけに怪我までさせられて。』


ライブ終わり、一人でシクシクと泣いていた晴人を思い出す。俺らには弱音を吐かず、隠れて泣いてばかりいた。

『エイトに入ったこと、ちょっとだけ後悔したこともあったけどさ。あいつらが味方でいてくれたの、結構嬉しかってんな。』




アイドルになること。
それは同時に、何かを捨てることでもある。

かけがえのない思い出、ファンの人たちの笑顔、歓声…

たくさんのものを得ると同時に、犠牲になるものもあるのだ。




『普通の青春なんて捨てたけど、それでもあの日、卒業式に出れてよかった。』




その言葉を聞けただけで、


今夜はよく眠れそうだ。

past.5→←#



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
111人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

donco(プロフ) - SEIさん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです〜! (2021年1月30日 17時) (レス) id: 29bbb7c934 (このIDを非表示/違反報告)
SEI(プロフ) - 更新お疲れ様です!とても読み応えのあるストーリーで、お気に入り登録しました!無理のないペースで、更新楽しみにしていますね! (2021年1月26日 15時) (レス) id: fb017ffbce (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:さざ波 | 作成日時:2021年1月23日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。