＃ ページ44
◎むらかみさん
『そのときね、2人に自分の思ってること話してん
『本当のこと言ったら、嫌われるんじゃないかと思ってた。』
『でもな、2人とも背中押してくれた。辞めたらあかんって。』
晴人は照れ臭そうに笑った。
こいつ、辞める気でおったんか。
そのことに驚きつつも、あの2人が彼を引き止めて背中押してくれたことには感謝の気持ちしか出てこなかった。
「そっか。良かったな、2人と話せて。」
『うん。』
俺たちには踏み込めない同期との絆。
お互いが大切だからこそきっと、2人が晴人のことを裏切るなんてことは考えられなかった。
だからこそ、言っておきたいことがあった。
「晴人は俺のこと嫌いか？」
『えっ？』
「だから…お前は俺のこと嫌いかって聞いてんねん。」
『…嫌いなわけないよ。だって、信ちゃんは俺のことを思って注意したり、怒ったりしてくれてるんでしょ？』
不安げな晴人の声が聞こえる。
でも、ほら。晴人はちゃんと分かってるねん。
俺らの気持ち、ちゃんと受け止めてくれてるやんか。
「それと同じや。俺も晴人のこと、嫌いになるわけない。何を言われても絶対に嫌いにならんよ。」
俺がそう言うと、電話の向こうの晴人はすっかりと黙りこくってしまった。
でも、これでいいんや。
伝えたいこと、伝えられたんやから。
きっと晴人は、分かってくれる。
しばらく沈黙が続いたあと電話口からは本当に小さな声で、うんと返事が返ってきた。
「じゃあ、ゆっくり休めよ。また電話するわ。」
『うん。じゃあね。』
晴人が電話を切ったのを確認してから、俺も通話終了ボタンを押す。
＿＿＿＿＿晴人が休養を発表してから早9ヶ月。
事務所からは未だに体調不良というアナウンスしかされておらず、ファンの間では重病説なども流れ始めている。
晴人のためにすべきこと。
晴人のことを思ってできること。
自分たちにできることを、やっていくしかない。
不思議と気持ちは軽くなっていた。
久々に晴人と話して、もやもやとした自分の気持ちが晴れたようだ。
“自分の内面を文字に起こすことで、不安定な自分の状態や気持ちを整理できる”
あながち間違いじゃないな。
そう思った俺は少しだけ笑い、晴人からの手紙を丁寧に折りたたんで引き出しにしまった。
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donco(プロフ) - SEIさん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです〜！ (2021年1月30日 17時) (
レス) id: 29bbb7c934 (このIDを非表示/違反報告)
SEI(プロフ) - 更新お疲れ様です！とても読み応えのあるストーリーで、お気に入り登録しました！無理のないペースで、更新楽しみにしていますね！ (2021年1月26日 15時) (レス) id: fb017ffbce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さざ波 | 作成日時：2021年1月23日 1時
