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◎むらかみさん
2011年、4月。
「許可も取らんと行ってええことなんてあるかぁ!ほんっまに勝手なことしよって。」
「ごめんなさい…」
俺の目の前には、シュンとした顔で肩を落とすヤスの姿。いや、俺かて怒りたくて怒ってるわけじゃない。
ヤスは3日前、メンバーやマネージャー、関係者の誰にも相談せずに晴人が入院する病院に突撃したらしい。
幸い、晴人は面会許可が下りる状況やったらしく30分程度喋れたみたいやけど、問題はそこではない。
「安田さん、白岡さんが精神科に入院していることは極秘なんですから。もしマスコミにばれたらどうなることか。」
マネージャーのすぎもっちゃんが言う通り、晴人が入院していることは事務所内でも一部の人しか知らない機密情報。
俺らが勝手に動いてマスコミに詮索されることをしようもんなら、結果的に晴人を傷つけてしまうことになりかねない。
「ヤス、これからもし晴人に会いに行きたいんやったら相談してくれ。そしたら時間とかも合わせて、守られた状態で会わせてやれるから…」
「信ちゃん!」
すると突然、ヤスが大声をあげて立ち上がり、語気を強めて話し出した。
「晴人はな、守られたいわけじゃないねん。今まで一回でも、誰かが晴人のほんまの気持ち聞いてあげたことあった?助けてあげたことあった?」
胸がギュッと痛くなる。
晴人の本当の、気持ち。
「晴人、ずっと無理してた。僕らの知らんところで、一人で泣いてた。晴人は強い奴やって褒めて、晴人がほんまの気持ちを伝えられへんような環境を俺らが勝手に作ってた!」
ずっと、あいつから話してくれるのを待ってた。でも何も弱音を吐かない晴人を、疑わずにそのままの晴人として受け入れていた。
「ヤス…」
ずっと甘えていた。
晴人の強さに、メッキで塗り固められた、偽りの強さに。
「守るって、何?世間の目から守るってこと?ジャニーズのイメージが崩れることから守るってこと?それってほんまに晴人のためになってるの?」
「俺らがほんまに守らなあかんのは、晴人の中にある本当の気持ちやろ!!」
俺だって、守ってやりたい。
それはここにいる全員が思っている。
でも、その守り方がわからへんねん。
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donco(プロフ) - SEIさん» コメントありがとうございます。楽しみにしていただけて嬉しいです〜! (2021年1月30日 17時) (レス) id: 29bbb7c934 (このIDを非表示/違反報告)
SEI(プロフ) - 更新お疲れ様です!とても読み応えのあるストーリーで、お気に入り登録しました!無理のないペースで、更新楽しみにしていますね! (2021年1月26日 15時) (レス) id: fb017ffbce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さざ波 | 作成日時:2021年1月23日 1時