【歌い手】まだ、君と歌いたい。【男主】 (ページ11)

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「あー、いらっしゃぁせ」
『雑かよ』

俺の行きつけの居酒屋は、決して人気店ではなく、人はいつでもちらほらとしかいない。というか、いない。

が、俺は結構いい所だと思っている。家から近いし、店員も知ってる人しかいないから、呑みやすいのだ。
まぁ、そのせいで呑みすぎるのかと言われれば、それまでなんだけど。

「あっ、律！やっと来たかー」

いつもはこれより早く来るだろ、とにこにこする目の前の奴は、高校の時のクラスメイト、仁科友樹だ。

「なんで遅れた？やっぱしあのメールがあったから？」

にこにこだった表情が、にやにやに変わった。

こいつは一人でも会話ができる奴なのだが、話があらぬ方向に行ってしまうのは悩みどころだ。

『色々ぉ考えてたんですぅ～』
「え、まさかもう酔ってんの？」
『酔ってねーよ』

と、急に目の前に日本酒を置かれる。

「お待たせ致しました、日本酒です」
『……待ってないですけど』

確かに頼もうとはしたけれども。

「んでー、今日話すべきは真冬のことだよなー」

同じ高校だった訳だし、友樹もまふも、面識はある｡
むしろ仲良かったはず。
重ねて俺が、酒に酔ってはまふの話をするので、俺とまふのことについてはおおよそ知ってる。

『……通いそう？』

一番心配なことなのだ。
会ってしまっては絶対にいけない。せっかく格好よく意思表示したのに。

「んふふー、また来いよって言ったー」
『………………えっ？』

どうにかして、俺とまふを会わせるのを阻止してくれるのだとばかり思っていた。

『ぁ、あぁ、じゃ、もうここくんのやめるわ』
「おーい、逃げんなって」

呆れたように言う友樹に、怒りなどとうに通り越して、もはや恐怖の意を抱く。

「雲宮律くん!!!!!!!!」
『ぅい』

急に名前をフルネームで呼ばれ、さらに指を差され驚く俺。

「君は、ずっと友達が、恋しい、会いたくない、謝りたい、仲直りしたいとかその他諸々の気持ちを友達に向けている人の話を聞く人の身になったことがあるかい？」
『ややこしくて分かんね』

まぁつまりは、俺がまふの話をして、それを聞いてる友樹の気持ちってことだ。

「オレはねぇ、イライラするよ？」
『あの友樹が……!?』
「…………お前ちょっと酔ってきてんだろ」

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人物紹介

仁科友樹ﾆｼﾅﾄﾓｷ
律、真冬と面識あり。爽やかなイケメン。
頭は悪い方。なんだかんだ言って2人を応援してる｡