・ ページ9
カリムが席を立った瞬間、ジャミルが止めに入った。
「! カリム、待て。俺が用意してくるから、お前は座ってろ」
「いいって。アイスの用意なんか、冷蔵庫から出してくるだけだろ?」
ケロリとした表情で、首をかしげるカリムにジャミルは困ったように腕を組んだ。
「馬鹿。主人に給仕させる従者がどこにいるんだ。
お前はもう少しアジーム家の後継としての、自覚を持ってくれ。
お前にそんなことをさせたと知れたら、俺が父さんたちに怒られる」
「ジャミルは真面目だなあ。いいじゃないか。今は同じ学園の生徒同士だろ?」
一歩も譲らないカリムに、ジャミルはため息をついた。
「……はぁ。それじゃあ、俺がさらに盛りつけるから、運ぶのを手伝ってくれないか?」
「お安い御用だぜ!」
ふと、隣にいるグリムがゴソゴソと物音がした。
何やら漁っているようだ。
それにカリムは気づいたようで、首をかしげながらグリムに問いかけた。
「ん?どうかしたか?」
「い、いや?なんでもねぇんだゾ!」
グリムはそう言うと、疑いも知らないような笑顔で『そうか!』と、言った。
太陽のような笑顔が眩しい。
「よし!今用意してくるから待ってろよ!」
厨房に向かうジャミルの後を追って、カリムは駆けて行った。
「……オレ様、いよいよ混乱してきたんだゾ。
今のカリムは人の話を聞かないけど、悪いヤツじゃねぇ気がするんだゾ」
厨房から戻ってきたカリムは、アイスを持っていなかった。
それに笑顔ではなく無表情で、私たちを見下ろした。
口を開いたと思ったら先程の声とは、程遠い冷たい声色だった。
「おい、お前たち……。
いつまでメシを食っているつもりだ!王様にでもなったつもりか!?」
「「え、えぇ〜〜〜〜!?」」
声を荒らげるカリムに、寮生たちはびっくりする。
「今すぐ食器を片付けろ!すぐに午後の特訓を始める!」
「「は、はい……っ!」」
さっさと食器を片付けていく寮生たち。
グリムはがくがくと身体を震わせた。
「ヒィ……また怖い方のカリムになっちまったんだゾ!」
「ユウたちも逃さないぞ。今日は夜までみっちり防御魔法の特訓だ。さあ、庭に出ろ!」
「情緒不安定ってレベルじゃない!」
無茶苦茶なカリムにユウくんまでも、少し震えた声色だった。
296人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:金平糖 | 作者ホームページ:(ヾノ・ω・`)ナイナイ
作成日時:2022年4月10日 15時