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「で、そんなピンチだってのに、学園長は全然連絡つかねーし!本当ムセキニンなヤツなんだゾ!」
むっと怒り顔になるグリムに、アズールは考えるように顎に手を当てた。
「他の寮にあんま興味ないから知らなかったけど、スカラビアの副寮長だったんだ」
「寮長の圧政に、副寮長である彼が困っている。
……ふむ。
では、力になってさしあげなくては」
にっこりと満面の笑みで言うアズールに、Aとユウはぽかんとした表情になる。
グリムも予想外だったようで、首を傾げた。
「ほぁ?オメーがそんなこと言うなんて、どういう風の吹き回しなんだゾ」
「失敬な。僕は前回の一件で自分の欲深さを反省し、心を入れ替えたんです。
これからは海の魔女のように、慈悲の心で学園に貢献しようと決めています。
それに他にも、反省すべき点がありますし……」
後半部分がごにょごにょと小さい声だが、グリムたちは特に気にしていないようだ。
「今、スカラビアが危機に瀕し、クラスメイトが助けを求めている──。
そんな一大事、無視することは出来ません」
(うわ、ものすごくわざとらしい……。完全にジャミルの弱みを握りたいって顔してる……)
Aはアズールのわざとらしい笑顔や声に、素直にそう思った。
リーチ兄弟も勘づいたのか、ニヤニヤしていた。
「ふ〜〜〜ん?」
「ほほぅ……?」
ふたりの反応を見て、アズールはハッとして真剣な顔になった。
「毎年同じ顔に囲まれてターキーをつつくのにも、飽きてきたところです。
僕たちも明日からスカラビアへ、お邪魔しようじゃありませんか」
またにっこりと笑うアズールに、グリムはゲッと嫌そうな顔をする。
「えぇっ!?せっかく逃げ出したのに、また監獄に戻るのか?オレ様、嫌なんだゾ」
「まーまー、アザラシちゃん。そう言うなって」
「アズールに任せておけば、きっと楽しいホリデーになりますよ」
にこりとリーチ兄弟も満面の笑みだ。
「お邪魔するのに手ぶらも失礼です。ジェイド、フロイド、手土産の準備を忘れずに」
はーい、と言いながら笑いをこぼすリーチ兄弟。
「灼熱の砂漠で過ごすホリデー。悪くないじゃありませんか。
楽しみですね。フフフ……」
アズールも笑いをこぼしたところで、Aはなにかよからぬ事を考えているなと思った。
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作者名:金平糖 | 作者ホームページ:(ヾノ・ω・`)ナイナイ
作成日時:2022年4月10日 15時