第33話(花火大会編) ページ34
頬をふくらませていると、Aちゃんが袖をくいっと握る。
「レトさん、お邪魔みたいですから、行きましょうか」
こころなしか、Aちゃんの顔が赤く見えた。
妙に可愛く見えて、俺は頷いた。
「せやな。……じゃ、紅葉ちゃんばいばーい。それと、キヨくん頑張ってえなぁ〜！」
キヨくんに“頑張れ”という言葉をかけ、俺はAちゃんと手を繋いで、奥へと進んだ。
人通りも少なく、少し薄暗い場所に来て、Aちゃんにここで大丈夫かどうかと聞く。
『はい。大丈夫です』と、可愛らしい笑顔を向けたAちゃんはとても眩しく見えた。
「花火が上がるまでもうちょっと待たなあかんな。あ、そういえば罰ゲームの内容……」
思い出したように俺がそう呟くと、Aちゃんは震えた声で俺の名前を呼んだ。
「……レトさん」
「ん？なんや？」
少し暗い表情をしたAちゃんに、俺は安心させるように手を握り返した。
決心したように、Aちゃんは俺の目を真っ直ぐ見た。
「実は……レトさんが実況者ってこと、知ってるんです」
そういったとき、ああやっぱりなと思ってしまった。
確信はしていなかったが、Aちゃんは俺のこと知ってるのかもなんて心のどこかで思っていた。
本当にただの勘だった。
「……へえ、そっか」
「へ……？」
予想外の返信だったのか、Aちゃんは目を丸くさせた。
『驚かないんですか？』と、Aちゃんが聞いてくるので、思ったことをそのまま言葉にした。
何となく、俺の視聴者だと思った。
でも確信はしていなかった、と。
「……」
Aちゃんは黙ったままだった。
「でも、Aちゃんのことは本当に好きやし、一目惚れなんや。そこは信じて欲しい」
そう伝えると、Aちゃんの大きな瞳は揺れた。
「俺、実況の時とちょっと違うやろ？幻滅してへんか？
今更言うても、アレやけど……」
そう言うと、首を横に振って幻滅なんかしてないと言ってくれた。
「……私は“実況者としてのレトさん”ではなく、“本物のレトさん”が好きですから」
そう言われて、心底嬉しくなった。
ああ、可愛い、愛おしいという思いが溢れて、俺は気づいたらAちゃんに抱きついていた。
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作者名：金平糖
| 作者ホームページ：(ヾﾉ･∀･`)ﾅｲﾅｲ
作成日時：2020年9月17日 14時
