第30話(花火大会編) ページ31
「欲しいなら、レトさんも買えばよかったじゃないですか」
「んー？俺はAちゃんにあーんしてもらいたいから、一つだけ買ったんやで？」
「……一つだけじゃなくても、やりたいならやりますよ？」
キョトンとした顔で言うので、俺は少し恥ずかしい気分になる。
「……ちょ、そんなこと言わんといてや。可愛すぎる」
「えっ、ご、ごめんなさい。無意識に……」
「……たこ焼き、一口くれるか？」
「あ、はいっ……！」
熱を冷まして、俺の口に運んでくる。
Aちゃんは恥ずかしいようで、頬が赤くなるのが見えた。
「あー……ん、うん。美味いなぁ。そういえば、Aちゃん、花火見る？」
「あ、見たいです」
「ふふ、女の子は花火とか好きやよなぁ。それで、俺穴場スポットみたいなところ見つけてみたんや」
『リサーチ済みやで』と言うと、Aちゃんは『なんか申し訳ないです……』と言う。
「ええんや。花火は二人きりで見たいと思っててな。……それとも二人きりはまだ、恥ずかしい？」
Aちゃんの顔を覗こんで、俺は問うた。
Aちゃんは途切れながらも、言葉を紡いだ。
「いえ、は、恥ずかしいはあると思いますが……。その、レトさんと一緒に、二人きりで見たいです……」
「よっしゃ、決まりやな。花火が始まる時間はもうちょっと後やし、なんかして遊ぼうや！」
「はい……！」
辺りを見回すと、近くに金魚すくいがあるのを見つけた。
「あっ、Aちゃん、金魚すくいあるで」
「金魚すくい……。なんだか懐かしいです」
近くまでよって、金魚を見ていると屋台の人に『やっていくかい？』と聞かれた。
「せっかくやから、やる？」
「ですね！」
お金を払って、屋台の人から金魚を掬うポイと、おわんを貰う。
「レトさんはこういうの得意なんですか？」
Aちゃんが金魚を見ながら言うと、俺はうーんと考える仕草をした。
昔のことを思い出すが、あまり取れた経験はない気がする。
「うーん、どうやろ。結局運やからなぁ……。Aちゃんは得意なん？」
「ふふ。私、金魚すくいは意外と得意なんですよ」
にこりと笑うAちゃんに『おっ、なら勝負しようや！』と、言う。
「望むところです！」
「負けたら罰ゲームってことにしやへん？」
「わかりました！」
ポイを構えて、金魚すくいの勝負が始まった。
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作者名：金平糖
| 作者ホームページ：(ヾﾉ･∀･`)ﾅｲﾅｲ
作成日時：2020年9月17日 14時
