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そんな食生活をしていたわたしだったから。
一人暮らしを始めてからのほとんどを、バイトに入った時の賄い以外でもここ、カフェ 嵐でご飯を食べるようになったのは、そんなに時間がかからなかった。
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きっかけは、いまでもはっきり覚えている。
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A「あぁ〜…かっこいい…………」
相葉「心の声、ダダモレだよ〜」
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翔センセイがこの店にきてコーヒーを飲むのを眺めていて、気が付いた事がある。
センセイの手首についたその時計は、どうやら手巻き式のようで。
気が付くと、龍頭を巻き上げているのだ。
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A「や、ち、違いますよ！時計ですよ！時計がかっこいいなって……//」
相葉「ホントにぃ〜？(笑)」
A「ホントですって！」
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チラリとみた相葉さんは「パテックフィリップかー」と、ボソッと呟いた。
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A「ぱて……？」
相葉「パテックフィリップ。いい時計だよね」
A「……っていう名前の、時計なんですか？」
相葉「多分ね。カラトラバじゃないかな、あれ」
A「ここに、ちっちゃい時計がもいっこついてるんです」
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わたしが伝票の下に時計の絵をかいて、その下側にも小さな文字盤を足すと。
相葉さんは「へえ」と言って。
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相葉「スモールセコンドついてんだ」
A「高いんですか？」
相葉「うーん……高いと思うか安いと思うかは、つける人の価値観によるかな」
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との時、わたしはその時計の名前を忘れないように、心の中で「パテックフィリップ、カラトラバ……」と繰り返した。
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A(レディースもあるかなぁ……)
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それを聞いて。
わたしもセンセイとお揃いの時計をこっそりつけたいな……なんて思うようになった。
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けれど、そう思っていたのも─────長い時間ではなかった。
だって、相葉相葉「高いか安いかはその人が決める」って言ったけど。
ちょっと検索してみれば、びっくりするような値段で。
どう考えたって、誰がみたって「高い」の部類入る時計だった訳で。
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A(でも、いいんだもん……)
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「いつかは、つけたいな」ってくらいの。
遠い遠い未来の夢みたいに思うのは、すぐだった。
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だって。
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A「いらっしゃいませ」
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だって。
それから数日後、わたしは失恋をしたのだから。
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作者名：12（とうふ）
作成日時：2015年4月1日 23時
