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A「……っ、…………？！//」
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まるで絵本に出てくる王子様が、お姫様にするみたいな。
そんな、髪に落とされたキス。
わたしは反射的に後ろにカラダを引いて逃げようと、した……の、だけど。
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A「痛……ッ」
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わたしが逃げるよりも早く。
わたしの髪が、相葉さんの指先をすり抜けるよりも早く。
相葉さんがぎゅ、とわたしの髪の束を握るように掴んだ。
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相葉「あ、ごめんごめん(笑)」
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相葉さんは「痛い」と言ったわたしに、パッと握っていた手を開いて離してくれたけど。
急に引っ張られる形になって、髪の根本に鈍い痛みを残した。
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A「急になにするんですか！ びっくりするじゃないですか！」
相葉「あはは(笑) ごめん、つい」
A「もー…痛い……」
相葉「痛いの？」
A「そりゃ痛……い…………」
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髪の根本は、こめかみあたりで。
ゆっくりと相葉さんの節ばった手が近付いてきたかと思うと─────よしよし、とわたしの頭を撫でた。
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A「…も、だいじょぶ……ですから//」
相葉「ほんと？」
A「ほん……」
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手のひらが離れていったかと思うと、今度は相葉さんの顔が近付いてきて。
そうして、今度は髪にじゃなくて。
こめかみに唇が落とされる。
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A(うわ……)
A(うわー！)
A(うわ─────！！)
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ほんの少しだけあいた唇が寄せられるその瞬間。
まるでキスみたいだ……なんて、そんな事を一瞬でも思ったのが最後。
わたしは体をかたくして。
ギュ、とブラウスを握り、目を閉じた。
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A「あ……相葉さ……っ」
相葉「……ダメ？ だって俺が作ったんでしょ？」
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握った手に、相葉さんの手が重ねられて、ビクリとカラダが反応すると、相葉さんが小さく笑った。
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相葉「ほら。髪だって、この指の爪だって」
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落ち着いた声だけど……やさしい声とは違う。
有無を言わせない芯の強さをもった、言い聞かせるような言葉に、わたしは言い返せる事なんてできなくて。
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相葉「ぜんぶ、俺が作ったんだから……だから、ちょっとくらいいーじゃん(笑)」
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「おいしくできたかな？(笑)」というと。
相葉さんはほどく様に、わたしが握り込んだ指を一本ずつ丁寧に開かせると─────今度は指先に、唇を落としたのだった。
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作者名：12（とうふ）
作成日時：2015年4月1日 23時
