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A「あそこのお店の雰囲気、うちとはまた違っててステキですよね」
相葉「でしょー(笑)」
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相葉さんは「うんうん」って頷きながら続ける。
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相葉「俺、明日ちょっと用事で店……開けられないんだけど。代わりにきてくれるから大丈夫だから」
A「了解です」
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相葉さんは「Aちゃん。宜しくね」って、わたしにそう言って─────ぽんぽん、って頭を撫でた。
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松本さんは、外国の人なのかなって最初一瞬思った。
でもしゃべってみたら流暢な日本語で。(当然か)
お店の事を、手慣れた様子で─────まるで、自分のお店みたいにその日、カウンターに立っていた。
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A(変な感じ……)
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嵐なのに─────相葉さんがいないなんて。
相葉さんじゃない人が、あそこにいるなんて。
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A(なんだろう)
A(なんか……もやもやする……)
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にっこり笑ってくれる笑顔はとても素敵だし、やさしいけれど─────相葉さんみたいな、お日様みたいな笑顔じゃない。
そんな事を考えてぼーっとしたわたしが、間違ってお客様に飲み物をお出しした時、唇をゆがめて片頬を上げて笑ったけど。
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A(違う……)
A(…………全然、違う……)
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相葉さんのあの、シニカルな笑顔とは全然違っていて。
それがわたしの中に、なにか心の中に澱のように溜まった。
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松本「お疲れさま」
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「もう大丈夫だよ」、というと─────松本さんはわたしに、オムライスを出してくれた。
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A(これも)
A(これも─────違う……)
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相葉さんのオムライスは、薄い卵の上にケチャップで(汚い)文字が描かれたものだけど。
松本さんが出してくれたオムライスは─────オムライスこそ、いつもみたいな薄い卵で包まれたものだったけれど。
ソースだってケチャップだったけれど。
ケチャップはトロリとしたソースみたいになっていて、その上に生クリームでスッとハートが描かれていた。
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松本「…………どうぞ？(笑)」
A「あ、い、いただきます」
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わたしはどれくらい、そのオムライスを眺めていたんだろう。
見かねた松本さんが、わたしにそう言うまで、わたしはずっと。
ずっとずっと、オムライスを眺めていた。
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作者名：12（とうふ）
作成日時：2015年4月1日 23時
