【男主】無気力少年の受難。【僕のヒーローアカデミア】 (ページ10)

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7話ページ10

結局個性を使わないまま種目は進んでハンドボール投げまで来てしまった。

相澤先生の厳しい目とクラスの人たちの疑念の目が突き刺さって痛い。

これまでで個性を使ってないのは緑谷くんと僕だけで、僕は焦った様子も見せていなかった。

緑谷くんの番になって彼は勢いよく投げたが記録は個性を使ったとは思えない記録だった。多分緑谷くんは使うつもりだったんだろう。驚いていたから。

そしてそれは相澤先生のせいなんだろう。周りがヒソヒソと"イレイザーヘッド"とやらの話をしている。聞いたことはないけど。

緑谷くんが相澤先生に解放されたところで２投目の準備に入った。

僕は緑谷くんへの心配はしていなかった...決して緑谷くんが嫌いだからとかじゃない。

ただ一つだけ言えること。

｢SMASH｣

僕と、彼は違う。

遠くへ飛んでいくボールを見て僕は目を伏せた。

隣にいた爆豪くんが緑谷くんに向かって怒鳴り散らしながら向かっていき、相澤先生に止められていた。

『...やっぱり仲良くしたくないタイプ。』

俗に言ういじめっ子.....嫌いだ。

僕の番が来て円の中に入る。

相澤先生から向けられるのは軽蔑したような目線だけで決して期待はしていないような目だった。

...勿論、個性を使わずにヒーローになろうなんてまぁ、良い気はしないんだろうけど、なんだか嫌だった。

相澤先生の軽蔑したような目も、爆豪くんの馬鹿にしたような目も、緑谷くんの心配するような目も、

なんだか、全部が嫌だった。

だから、少しだけ、裏切ってやろう。

『.....寄越せよ。』

｢.......？｣

諦念も、軽蔑も、優越感も、劣等感も、全部全部全部。

腕が重くなって、息が苦しくなるのを感じる。腕に禍々しい手が這って、巻きついて、ひとつの大きな腕になる。

｢なんだあれ...｣｢怖っ！｣｢...俺、この個性で良かった.....。｣

その言葉を聞いて顔が歪む。だから嫌なんだ。個性を使うのは。

その腕で投げたボールは遥か彼方に飛んでいった。

夜多A ハンドボール投げ記録[∞]