壱ノ肆 ページ5
*
朝、日が真東に登るころ。
言峰は胡蝶に連れられ、産屋敷という大きな屋敷に居た。
御館様と呼ばれる歳若い男を前に、胡蝶と並んで座る。
胡蝶は言峰をこの鬼殺隊に入れ込もうとしている訳を語り、いかに言峰が必要なのかを述べていた。
「──という経緯でございます。」
「ほう。そうかい。ところで、この方の御名前を伺ってないけど…、そうだね、名前を教えてくれないかい?」
嫌に心地のよい声で御館様とやらは言峰に話しかける。
御館様はどうやら盲目らしく、隣にいる奥方であるらしい女性に言峰がどんな容姿をしているのか聞いていた。
「私は、言峰綺礼。小さな教会の神父を務めている。」
「ことみね、きれい。─いい名だ。」
御館様は優しく微笑んで、言峰の名前をゆっくりと言う。
「私は産屋敷耀哉。君には、耀哉、と呼んでもらいたいな。」
言峰は産屋敷の言葉に驚き、そして、乾いた笑いを漏らした。
「クハッ、友好的だな、耀哉?それで?君は私に何をさせたいと?」
言峰の産屋敷を馬鹿にするような発言に胡蝶は眉間に皺を寄せる。
産屋敷は柔らかに言う。
「…それを、するかどうかは別として話を聞く。そう言う意味かな。」
「おや、このお嬢さんよりは頭が働くようだ。
お嬢さん、上司を見習いたまえ、無言は了承、または肯定の意ではないのだよ。」
胡蝶の笑顔の額に血管が浮かび上がる。
言峰はその胡蝶の姿を見て、小さく笑い、「愉悦。」と呟いた。
「では話を聞いて判断してもらおうかな。…いや、まず一つ質問させて貰おう。」
産屋敷が右手の人差し指を立てる。
「君は、人間かい?」
その瞬間、その場に戦慄が走った。
奥方や胡蝶は人間でないもの、と言ったら鬼だし、胡蝶に至っては言峰の「不思議な力」は血鬼術だったのではと思い始めた。
「さぁ、どっちなのだろうな。」
その瞬間、胡蝶は驚くべき素早さで抜刀し、剣先を言峰の喉に突き付ける。
奥方も産屋敷を守るために身を乗り出して庇う体制になっていた。
「哀しいな。先程まであんなに私のことが必要だと耀哉に熱弁してくれていたにも関わらず、殺そうとするだなんてな。」
ちっとも悲しくなんか無さそうな声色だ。言峰は貼り付けた笑顔なんかじゃなく、完全に歪み切った笑顔で胡蝶を見つめる。
「しのぶ、あまね。やめなさい。」
産屋敷の一声で女性二人がそれまでの姿勢に戻る。
「なぜ、人間か否か、分からないんだい?」
産屋敷は言峰に問うた。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
本ぶくろ(プロフ) - わ...わぁ...。口が心臓から出てきそうなくらい好きです!陰から応援しますー! (2023年3月29日 0時) (レス) @page6 id: 268b376be6 (このIDを非表示/違反報告)
眞尋(プロフ) - 頑張ってください!応援してます!!高評価、お気に入り登録しときました! (2019年12月27日 18時) (レス) id: d2f316c579 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひのまる。 | 作成日時:2019年10月27日 11時