壱ノ参 ページ4
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「鬼殺隊?」
言峰は聞いたことも無い軍隊なのか組織なのかよく分からないものに眉を寄せる。
「ええ。鬼を殺す隊、です。つまり先程のような者を滅する者の集まりです。」
胡蝶は鬼に突き刺した奇妙な形をしている刀を引き抜いて言う。
「ほお。初めて知ったな。…刀を所持しているようだが、国家公認の軍隊ではない、と?」
何を思ったか、言峰は笑顔を取り繕うのをやめ、ニヤニヤと人を馬鹿にしたような笑顔を浮かべる。
「…そうですね。国に認められていません。廃刀令が敷かれている今、私どもが憲兵に見つかれば捕まっていまいますねぇ。」
胡蝶は困ったように眉を下げる。
「まぁそんなこと、鬼を滅する使命の前では霞んでしまいますが。」
言峰は声を上げて笑った。
「はっはっは!面白いことを言う。…お嬢さんが私に話しかけてきたのは何か用があったからだろう?言ってみなさい。」
胡蝶は口角を更にあげて機嫌良さそうに言峰に近づき、手を取る。そしてこう言い放った。
「鬼殺隊に、入隊されませんか?」
言峰は真顔になって動きを止めた。
「そんな顔しないでください。貴方ほどの力量があればすぐになれますし、先程の怪我を治し、欠損した患部さえ蘇らせる不思議な力も隊士の救護に必要です。」
胡蝶は何としてでも言峰を鬼殺隊に入れ込みたいのか口早に言葉を紡ぐ。
言峰はその様子に呆れと驚きで言葉が出ない。
すると突然胡蝶は思い出したように筆と硯を取り出して何かを走り書く。書き終わると図っていたように鴉が現れ、胡蝶はその鴉に胡蝶は紙を託す。
「ここから産屋敷はそう遠くありませんから、出来るだけ急いで御館様に届けて下さい。」
鴉はそれを聞いて、バッと飛び立つ。
胡蝶は言峰に向き直って言う。
「今、鬼殺隊を運営される産屋敷耀哉様という方にお手紙を出しました。」
「君は私の了承の言葉を聞いたと?」
「無言は了承と見なしますよ?」
尚も胡蝶はニコニコと笑う。見掛けに反して胡蝶という女は押しが強い。強引だ。
「はぁ、もう辺りは暗い。家は何処だ。送ろう。」
言峰はもうこの話を終わらせようと話題を変える。
「ああ、結構です。それより、明日は夜明けと共に貴方を迎えに上がります。逃げないでくださいね。」
"逃がしませんけど。"口外に胡蝶がそう言っているようで言峰は頭が痛くなった。
「…好きにしなさい。」
その言葉を聞いた胡蝶は笑って姿を消した。
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本ぶくろ(プロフ) - わ...わぁ...。口が心臓から出てきそうなくらい好きです!陰から応援しますー! (2023年3月29日 0時) (レス) @page6 id: 268b376be6 (このIDを非表示/違反報告)
眞尋(プロフ) - 頑張ってください!応援してます!!高評価、お気に入り登録しときました! (2019年12月27日 18時) (レス) id: d2f316c579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひのまる。 | 作成日時:2019年10月27日 11時