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壱、藤の家紋の教会 ページ2

*


「───による福音。」

渋く艶のあるバリトンの声が教会に響く。
今日は礼拝の日であった。

前世では教会にある程度人は集まっていたのだが、今世では天皇を現人神とする風潮により集まる信者は少なかった。

礼拝は滞りなく終わり人が散る。


その時、悲鳴にも怒声ともつかない大声が聞こえた。

ここは町外れの小さな教会。
よく熊なり猪なり飛び出してくる。一つ溜息をついて言峰は立ち上がった。

前世では聖杯戦争などという物騒なものに参加していたし、代行者といって神に代わり信徒の異端者を殲滅する仕事も行っていた。
そのため戦闘能力は特化している。熊や猪を気絶させることなど造作もない。

声の聞こえる方へ向かう。

「うわぁああああ!!助けて!お、鬼がァ!!!!!」

「鬼だと?」
よもや、聖杯戦争がこの時代にも始まってしまったのか。もしかしたらサーヴァントが鬼と勘違いされたのかもしれない。

更に走る速度を加速して声の元を追う。
「ガァアアア゙ア゙ア゙ア゙!!!」

そこには狂ったように声を荒らげ、目は正気を失ったように瞳孔が開ききっている。全身に血管が浮かび上がり身体能力が飛躍的に向上している様子だ。

「助け、て。しんぷ、さ、ま。」
その生物の足元に横たわる男はあの声の主であるようだった。
まだ喋れるほどの生気はある。目も異常はない。ただ、左脚の膝の下からが無いだけで。

「…目を閉じなさい。」
言峰は男に声をかける。
言われた通り、男は目を閉じた。

言峰は治癒魔術は突飛して才能があった。一瞬にして欠損した足までも治してみせる。
「そして、耳を塞ぎなさい。」
男は直ぐに耳を塞ぐ。

懐に忍ばせていた黒鍵(つるぎ)を両手の指で挟み込んで構える。

「───告げる(セット)。」

「私が殺す。私が生かす。私が傷つけ私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない」

「打ち砕かれよ。
敗れた者、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え。
休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず、私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる」

「装うなかれ。
許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を。」

「休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。
永遠の命は、死の中でこそ与えられる。
――――許しはここに。受肉した私が誓う」

「――――"この魂に憐れみを"(キリエ・エレイソン)。」

 

壱ノ弐→←零、言峰綺礼という男



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本ぶくろ(プロフ) - わ...わぁ...。口が心臓から出てきそうなくらい好きです!陰から応援しますー! (2023年3月29日 0時) (レス) @page6 id: 268b376be6 (このIDを非表示/違反報告)
眞尋(プロフ) - 頑張ってください!応援してます!!高評価、お気に入り登録しときました! (2019年12月27日 18時) (レス) id: d2f316c579 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひのまる。 | 作成日時:2019年10月27日 11時

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