零、言峰綺礼という男 ページ1
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以下、言峰と呼ぶ。
言峰はこの大正の世に生きるべき男ではなかった。
言峰は聖杯戦争という、神の聖遺物「聖杯」を手にするため戦う魔術師とその使い魔、サーヴァントを監督する役目を担っていた。
しかし、第四次聖杯戦争の際、監督役の息子にも関わらず、聖杯に選ばれた者だけが持ち得る「令呪」を手の甲に刻まれてしまった。
魔術師でなかった言峰綺礼が聖杯に選ばれた。
そこには確かに「選ばれた理由」がある。
言峰は、先天的破綻者だった。
他人の不幸を、幸福と感じてしまう。
ことわざにある「他人の不幸は蜜の味」そのものである。しかしそんなことわざに嵌ってしまうほど軽いものでも無かった。
言峰は厚くイエスの父、神を信仰している清廉な信者だったのだ。
自らの欲と道徳心がぶつかり合い、物心着いた時から常に葛藤していた。
自分は産まれるべきではなかったのではないか。
存在するべきではないのではないか。
しかし、神は自ら命を絶つことを許さない。
これは神が与えた試練なのだと、乗り越えるべき課題なのだと、言い聞かせて生きていた。
それも、神は言峰を嘲笑うかのように、突き放すように言峰を「神の加護」から最も遠い「魔」を扱わせる魔術師にさせた。
まぁ魔術師となったあと、色々あった(恩師を刺して殺害したり恩師の妻をずっと愛していた男を絶望させてその妻を殺害させたり)が、結果的に言峰は聖杯を手にした。
何を願ったか分からない。
言峰が目を覚ました時には目の前は真っ赤に燃えて、焼け野原であった。
何を願ったか分からない。
それでも、そこにあったのは燃えた町だった。
十年後、第五次聖杯戦争が始まった。
自分の生涯の疑問である「存在しないもの、存在してはならないものが誕生したとき、そのものは最後の世界で何を思うのか。」に答えを見つけるために、全てを利用した。
少女の身体に「この世全ての悪」を宿らせ、それの誕生を阻む少年に立ちはだかった。
それでも、願いは果たされなかった。
神はまだ、己に試練を与えたいらしい。
言峰は鬼が蔓延る大正の世に産まれ直した。
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本ぶくろ(プロフ) - わ...わぁ...。口が心臓から出てきそうなくらい好きです!陰から応援しますー! (2023年3月29日 0時) (レス) @page6 id: 268b376be6 (このIDを非表示/違反報告)
眞尋(プロフ) - 頑張ってください!応援してます!!高評価、お気に入り登録しときました! (2019年12月27日 18時) (レス) id: d2f316c579 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひのまる。 | 作成日時:2019年10月27日 11時