霧の中Ⅱ【嘴平伊之助】 (ページ38)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:22,089 hit

第79話ページ38

・

『この辺りか…』

東の街までかなり距離があったので街に着く頃には夜になっていた。

ﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝ

心臓の音が鳴り止まない…

私に倒せるのか…

怖い…逃げ出したい…

足がすくんで動かない。

でも…倒さないといけない。

湊と約束したんだ…

必ず敵を討つって。

『ｽｩｰ…よし。行こう…』

ｽﾞｷｯ!

『…っ！』

歩き出した途端、傷跡が痛み出した。

『また…この痛み…』

驀踟に近づいているって事なのか…

『落ち着け…大丈夫だ…』

倒す…必ず倒す。

『…仇を討つんだ。』

ｶﾞｻｶﾞｻ

草むらの方から音がする…

伊之助か…？

いや、伊之助はこんな気配じゃない。

ﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝ

この気配…

冷酷で体全体が凍りつきそうな気配。

昔…感じたことのあるような、気配…

ﾄﾞｸﾝﾄﾞｸﾝ

『ッ…。』

心臓の鼓動が早くなっていく。

ｶﾞｻｯ

驀踟「お？なんか懐かしい匂いがすると思ったらおまえだったか。」

ｿﾞｸｯ!

一瞬で背筋が凍った。

構えていた刀が震える。

『お、お前は…』

驀踟「久しぶりだなぁ…A？」

『驀踟…』

・