私を変えてくれたのは5人の先生。RESTART19 (ページ25)

今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:57,117 hit

＃９５０ページ25

翔side

ソファーに座らせて俺とニノで左右をガッチリ固める。

医局には患者から預かった危険物や刃物もあるわけだから。

翔「切りたいだけ？」

A「ん…」

若干の希死念慮もありそうだな。

翔「頓服で薬飲もうか。」

和「じゃあ俺、取ってきますね。エビリファイ1mgでいい？」

翔「うん、ありがとう。」

袖の隙間から微かに見えたAの手首には蚯蚓脹れのような引っ掻いた痕がある。

まあ、これくらいなら許容範囲としよう。

翔「手首、見せてごらん？」

そう言うと素直に震える左手を差し出す。

袖を捲ると痛々しい過去の傷跡に重なるように赤く腫れたいくつもの線。

翔「痛い？」

A「ちょっとだけ…」

そりゃそうだよな…

和「はい、これだけ飲もう。」

ニノから薬を1錠受け取り、Aは素直に口に放り込む。

翔「眠くなったら寝てもいいからね。」

俺はAを寝かしつけるようにトントンと優しく肩に触れる。

さて…

あとひと月でこの問題をどう解決するか。

退院してから希死念慮に苛まれたら辛いもんね。

俺らがいるうちはいいけど、退院して新しい先生に会うまで少しの間がある。

その間に希死念慮やリスカしたいという思いが出てしまったらAが辛い思いをするだけだ。