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＃１６３ ページ37
Aside
声が……出てない…
なんで？
翔「ちょっと落ち着いてきたね。」
翔先生が私を抱えたままベッドにあがる。
「あのね…」
口を動かしても私の声は届かない…
「あ」の字も届かなかった。
たった一言、たった一文字…伝えることも出来ない。
翔「ごめん、和。あとは俺いるから大丈夫。」
翔先生は指示を出して和先生は自分の仕事に戻っていった。
翔「朝はごめんね。無理にやって。今日はもうずっとここにいるから。」
私は「いいよ」と言う代わりに先生に抱きついた。
声、早く戻らないかな……
桃とも話せない…
翔「焦らなくていいから。ちょっとずつね。」
先生はこういう時無理に質問したりしない。
昔は筆談だったけどあれもストレスが溜まる。
翔「どこも痛くない？喉に違和感とかもない？」
私は大きく頷いた。
翔「それならストレスによる失声症だろうね。」
また……
何も伝えられない地獄が始まってしまう…
今になってやっと気付く言葉の大切さ。
あんなに大嫌いだった言葉なのに…
翔「Aは普段通りにしていればいい。」
普段通り…？
翔「本当に伝えたいことはちゃんと伝わるから。」
優しく笑った先生を見て少しだけ自信が持てた。
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作者名：蒼紗仁真 | 作成日時：2018年5月22日 11時
