32話 ページ32
修道院行ってこい、とグルさんに言われ共に故郷に戻る。
建物はそのままだったが外には誰もいない。
「調べようにも人がいねえ」
「私は分かるけど、なんでらんらんとセットなのかね?」
「あの晩の当事者だからじゃない?で、修道院ってどこ?」
「東の方、だったかな?」
そう言いながら先に進む。
「私が来たときと逆だね」
「あー、赴任初日?」
「そうそう」
なんて喋りながら高い石造りの建物に近づく。
「これ?」
「これ。」
おそるおそる中を見るも誰もいない。
「ごめんくださーい」
ひとらんが声をかける。
中を見渡すも、やはり誰もいない。
「あら、お客さん?」
その声に振り返ると、背後に修道服を着た小さな老婆がいた。
「シスター・ミラ?」
「…A、なの?」
「お久しぶりです」
「立派になって…、中へどうぞ」
昔と変わらないシスターの部屋に案内され、私とらんらんは隣り合って座る。
「軍はどう?」
「しっかり務めさせてもらってます。こちらは同僚のひとらんらんです」
「どうも」
「てっきりAのお婿さんかと思っちゃった」
微笑むシスターに悪意の陰は見えない。
らんらんは耳を赤くして咳き込む。
「いつかそんな報告もできたら、と思います」
「待っているわ。私の目の黒いうちにお願いね」
「はい。それで、今日急に伺ったのはお聞きしたいことがありまして」
「なに?」
「私の出自について、私がここに来た当時のことについてです」
質問を投げかけた途端、シスターの微笑が薄くなる。
「それは、貴女のこれからに必要な事?」
「私の今守りたいものを守るために知るべき事実です」
「…ゆっくり話をしていたかったけど、そうもいかないみたいね」
シスターは席を立ち、引き出しから紙を取り出し窓際の小物入れを持ってくる。
「これが貴女を引き取ったときの書類。連れて来たのはこの人」
オトフリート・サイス。
シスターはその名を指差す。
「中将だな」
「うん」
「その人は貴女が20歳までここにいるようだったら渡してくれと置いていったわ」
小物入れを開けると、あまり見ない紋が押された銀の指輪が出てきた。
いや、見たことはある。
「これ…」
「王家の紋、か」
証拠が揃ってしまった、と後悔。
「現実は悲しいものね。祈っても何も変わらないもの」
私を見てシスターも苦しそうに声をかける。
現実が悲しいとか、苦しいとか、そんなの生まれたときからだ。
悲しい事実を知ることで今を守れるのならば…。
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煌月(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます！ゆっくりですが更新していきますので、最後までお楽しみいただければ幸いです！ (2017年7月10日 17時) (
レス) id: d216df1310 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - ひとらんカッコイイです。続き応援してます (2017年7月10日 16時) (レス) id: f53aaac50e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：煌月 | 作成日時：2017年5月29日 15時
