28話 ページ28
この人が話しかけてきた時点で嫌な予感はしていたが、意図がはっきり分からなければ対応のしようもない。
ここは状況を利用して中将の思うように動いて情報を得よう。
酒に酔わされた女を演じ、中将の出方を見る。
「どうやら無理に飲ませてしまったようだな。申し訳ない」
「加減が分からなかった私のせいです。気になさらないでください」
「部屋はどちらかな？お送りしよう」
「いえ、これくらい１人で何とかしますので」
と立ち上がるも覚束ない足元、という体。
咄嗟に中将が支えてくれる。
「おっと、大丈夫かな？」
「すみません、だらしないところを」
「東館のゲストルームなら３階か…。私の仕事部屋の方が近いから、そちらに向かおう。
ここにいてもまた１杯つき合わされるかもしれない。少し静かに休むと良い」
ちゃんと酔っ払ったことがないけどこんな感じで良いのだろうか。
そんなくだらない心配をしながら中将の執務室に案内される。
ソファに座らされてすぐ、どうぞ、と目の前に水の入ったグラスが出される。
「お気遣いありがとうございます」
「意識ははっきりされているようだが」
「少し足元がフワフワしているだけなので」
「それならば、丁度したかった話があるのだが、良いかね？」
深く息を吐いて中将は話す。
「こちらに付く気はないか？」
「それは引き抜き、ですか？」
「いや違う。自国の民を取り返したい、という話だ」
「自国の民、私が？
私には身寄りはありません。それとも、そちらで両親らしい人物に目星が？」
「調べさせてもらったんだよ、君の事。実に優秀な軍人だ。うちにはいない逸材だ」
「中将ほどのお方ならこれくらいいくらでも育てられるでしょう」
「人材は育てられるが、君に声をかける理由はそこじゃない。何にも代えられない血の問題だよ」
「血？」
「ここだけの話、私は王政復権を求めているんだが」
「こちらの王族階級は15年前潰えたと聞いておりますが」
「その通り。だが、完全に、とはいかなかったとしたら？」
可能性が私に向けられている、ということか。
中将の口ぶりから可能性ではなく確定事項らしい。
「根拠のない話に巻き込まないでください。私は天涯孤独の軍人です」
「つれないことを言わないでくれますかな、プリンセス？」
証拠はまだ掴めないが、この男はシンデレラストーリーを作りたいらしい。
そんなふざけた話、あってたまるか。
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煌月(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます！ゆっくりですが更新していきますので、最後までお楽しみいただければ幸いです！ (2017年7月10日 17時) (
レス) id: d216df1310 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - ひとらんカッコイイです。続き応援してます (2017年7月10日 16時) (レス) id: f53aaac50e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：煌月 | 作成日時：2017年5月29日 15時
