14話 ページ14
「はーい、しみるよー」
鬱先生の部屋でベッドに腰掛け、傷口の処置を受ける。
「痛くない？」
「痛いは痛いですが」
「ポーカーフェイスすぎるやろ」
「鬱先生の手際が良いお陰で痛みもさほど気になりませんよ。医官、だったんですね」
「まー、ちょっとかじってただけな。
いざ辞めるってなっても医者の道もあるし、なにより女ウケが良いから」
「ここに来たら女ウケもなにもなさそうですが」
「そんなことないよ。探せば手段なんていくらでもあるもんよ。
Aちゃんもいるしな」
患部をガーゼにおさえきつくかたく包帯を巻かれる。
肩が更に重たい。
「私がいても何もなりませんよ？」
「これからや、これから」
鬱先生が顔を近づけながら低く言う。
「これからなにをするんや？」
扉を見ると、総統が腕を組んで立っていた。
「グル、ちゃん、アイツはエエの？」
「コネシマに任せた。それよりAは大丈夫か？」
「処置は完璧。もう少しここで様子見ておきたいかな」
「じゃあ部屋に戻って良さそうだな」
「話聞いてた？」
「このヤニ臭い部屋で汚ねえベッドで寝かせておく方が悪化しそうや。
それともこっちの方が都合良いか、A？」
「私は業務に戻れます」
「じゃあ自室に」
総統に付き添ってもらい部屋に戻る。
「ありがとうございます」
私はベッドに座り、総統は執務椅子に腰掛け話す。
「いや、こっちも助かった。無鉄砲に仕掛けるかと思いきや交渉してきたからな、少し調子が狂った」
「総統は知ってたんですね」
「ああ、エーミールからな。それにしては俺が甘かった。
俺が真面目にやっておけばAも撃たれずに済んだやろな。
すまんかった」
「謝らないでください」
「でも、心強かったわ。向こうに行かないでくれて」
切なそうに笑みを浮かべる総統に私は言葉を続けた。
「ここが、私の居場所ですから。私の守りたい場所がここで、守りたい人がここに居ただけです」
渇いていたはずの私の中で、居心地の良い場所を奪われたくない、という気持ちがあの時巡ったのだ。
単なるひとつ屋根の下の同胞ではない、それ以上の情が私の中に生まれつつあったようだ。
「そうか、これからもよろしくな」
頭に乗せられた総統の手は大きく無骨だったが、やわらかな温もりを感じる。
「こちらこそ、よろしくお願いします。
グルさん」
「…総統呼びをやめるなら、もっと砕いて話せ」
何かを隠すようにグルさんは私の頭をクシャクシャにした。
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煌月(プロフ) - ななしさん» ありがとうございます！ゆっくりですが更新していきますので、最後までお楽しみいただければ幸いです！ (2017年7月10日 17時) (
レス) id: d216df1310 (このIDを非表示/違反報告)
ななし - ひとらんカッコイイです。続き応援してます (2017年7月10日 16時) (レス) id: f53aaac50e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：煌月 | 作成日時：2017年5月29日 15時
