無色透明

16 虫眼鏡side ページ16

「早く救急車…」

手が震えて上手くスマホを触れない

Aは血を吐いて倒れたまま動かなかった



いつから？
…いつからこんな状態になってた？




なんで僕は何も気づかなかったんだ



「A、ごめんっ…」


涙が溢れる
スマホの画面がぼやけて見えない

拭っても拭っても流れ落ちてくる涙が止められない。


思い返せばいくらでも心当たりはあった
昔、Aには心臓の持病があったって聞いたことがある


だけどそれはもう完治して今は良くなったって
聞いてたのに何で…




その時

部屋にインターホンが鳴り響く



ふらふらとおぼつかない足取りで玄関へ行って
ドアノブをひねる




「うわ、虫さん何か顔色悪くね？」




「ほんとだ。大丈夫？」



そこにはしばゆーとりょうくんがいた



「近くでご飯食べてたからついでに虫さんの家にも寄っていこうかなと思って。今、中入れる？」



僕はそんなりょうくんの服を掴んで叫ぶように
言った





「Aが……Aが！」




呼吸が乱れて言葉に詰まる




「え、ちょっと待って。これ大丈夫なの？」




「Aに何かあった？」





早く伝えなきゃいけないのに言葉が出てこない


息苦しい、



















「…あーあ、病人は無理せずに休んでたほうがいいんじゃない？」






この声






「…てつや？」




「ここは俺に任せていいから」




「は、それってどういう…」



「りょうとしばゆーさ、虫さん連れて病院まで
行ってくれん？この状態やばいと思うからさ」



「え、いやそれはいいけど…何でてつやここに居んの？」




「んー、やっぱりリーダーだからメンバーの
一大事な時は分かるって言うか？」




「は？」



「あーっと！こんな話してる場合じゃない！…ってことで後は宜しく〜」





てつやはそれだけ言うと、そのまま家に入って
すぐにドアを閉められる





…ここ一応僕の家なんだけど


まるでAに何が起こったのか分かってるような様子だったし、あの二人昔から仲良いからてつやも僕の知らないようなこといろいろ知ってるんだろうな。






そう思うと、少し心の奥が痛む感じがした

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