十六話:過去〜その3〜 ページ18
『一時間しても、二時間しても母が帰って来なかったので家に引き返すと、血塗れの両親が横たわっていました。その上に、石化した友達の親が腰をかけて、ニヤリと笑っていました。もう、悲しみとか恐怖とかそういう感情は消え去り、ただただ憎くて仕方がありませんでした。』
『気が付いたら、私の目の前には、凶器をもって、今にも襲ってきそうな勢いで固定されている男が見えました。まぁ、石化していたので、大丈夫でしたけどね。』
目を細めて笑いながら彼女は言った。
吸い込まれそうな深い深い黒目で彼を見つめながら。
『現実から逃避するために、私は自分に暗示をかけました。此処は、誰も死なない世界だから大丈夫。本当は父も母も生きているんだ、と。』
胸に手をあてて、咳をごほごほとすれば、途切れ途切れに続ける。
『……でも、駄目でした。目を瞑ればあの時の光景が染み付いている…。悪夢ですよ。人殺しは幸せになんかなっちゃいけないんでしょうね」
轟『……苦しかったよな。今までずっと一人で抱え込んで来たんだろ？』
彼は、彼女を抱き締めていた。
強く、でも優しく。壊れ物をそっと撫でるように。
轟『お前の辛い気持ちを、俺も一緒に背負う。…だから、下の名前、教えてくれないか？』
物凄く嬉しかった。
嗚呼、もう何も要らない。欲しがるものなんてもう無い。
『…Aです。命無、A』
いつの間にか、泣き出していた。
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橘欅 - はい、大正解です!時折他の曲も混ぜてますのでどうぞお当てくださいな。あと、応援ありがとうございます！最後までどうぞお付き合い下さい！ (2017年7月3日 17時) (
レス) id: df1377bb0c (このIDを非表示/違反報告)
mai(プロフ) - これって林檎売りの泡沫少女ですよね！とても面白かったです。次の展開に期待してます♪ (2017年7月3日 0時) (レス) id: 95be3cdce4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：橘欅 | 作成日時：2017年5月14日 19時
