あなたに夢中。Ⅱ (ページ33)

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Richard side

次のコンサートでのA以外の6人で歌う曲、『名脇役』に引き続き『君の彼氏になりたい』ときた。

提案したのは俺。こいつらの本音を代弁したみたいな曲やなって、聴かせてもらったときから思ってた。

そんなことを知ってか知らずか、偉い人たちもスタッフさんたちもSnow Manさんも、快くOKしてくれた。

末「『チューして』、ばりムズいねんけど」

リ「そこで躓くと思わんかったわ」

末「佐久間くんの『チューして』がかっこええから」

福「大好き♡…いや、大好き。のほうがええかな」

佐「大好き。のほうがよくないですか？」

正「帰さない…帰さない…帰さへん。うーん」

小「帰さへん、やとちょっと強気なかんじするかも」

リハを終えて、ダンスは完璧やけど各々苦戦してるみたい。

カメラで絶対抜かれるところやから、こだわる気持ちはよくわかる。でもこいつらは別の気持ちも入ってそうやな。

そんなことも知らんと、リハで納得いかんかったんか、1人で『ってあなた』をひたすら歌い続けるA。

「うーん、遊ばれたことないからあかんのかな。ちょっと遊ばれてこよかな」

リ「やめとけ、体張りすぎや」

「『火をつけたなら、消してって』っていう気持ちは、わからなくもないんやけど…」

Aは、そうポツリと呟いた。Aはこんなふうに、歌詞に感情移入して歌う、いわゆる憑依型。

こないだ末澤が真面目な顔して、「あいつ、大晴のこと好きやったんちゃうかな」って言うてきた。

それは、実は俺もそうなんちゃうかと思ったことがあって。呼び方とかあの生理の一件とかもろもろ、思い当たる節はけっこうある。

前にAが『Maybe』を歌って、涙を流した。そのときにもしも歌詞に感情移入してたんやとしたら。

初恋の相手である末澤に失恋したときに、救ってくれたのが大晴ってことなんかな。それとも、その間にもう1人好きになったやつがおるんかな。

じゃあ大晴のことを好きでいるのをやめたのは、なんでなんやろう。

リ「『視界を塞いでた闇を静かに晴らした』…」

「どしたんすかリチャくん、『Maybe』歌いたかったん？」

リ「あ、いや、なんでもない」

Aも、けっこう悲しい恋愛してんのかもしれへん。

そう思ったら、『君の彼氏になりたい』を提案したことに、少し負い目を感じた。