あなたに夢中。Ⅱ (ページ15)

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Seiya side

Aが俺のことを、どれくらい本気で好きやったかは正直わからへん。

別に派手なアプローチもなかったし、俺に態度を変えることもなかった。やから、まったく気づかんかった。

どっちかというと俺やなくて正門のほうに懐いとったし、大晴と付き合ってるって噂も出てたし。

もし、Aの初恋がほんまもんの「恋」なら

俺たちは、見事にすれ違ってしもたんやな。

末「あのさ、雑誌のインタビューに書いてたことやねんけど」

「はい」

テレビの収録が終わって、俺はAのことをドライブに誘った。

目の前に広がるのは、冷たそうな冬の海。俺らは車から出ずに、テイクアウトしたコーヒーを飲みながら真っ黒の海を眺めた。

末「そのさ、いつまで、あれやったん？」

「いつまで誠也くんのこと好きやったかって？」

こいつのことやから、「一瞬でしたよ！」とか言うんやろか。

「難しいんですけど」

末「おん」

「あれが初恋やったって気づいたの、去年とかなんですよね」

末「は？」

いや、おまえ今いくつなんよ。22やろ？

「あ、もちろんインタビューどおり、グループ結成前にはもう好きとかじゃなかったんすよ。ただ、『けっこう本気で好きやったんやな』って思ったのが去年です」

末「もしかして、去年ってさ」

「おん。誠也くんとキスしたときですね。キスしたときに、『初めてがこの人でよかった』って、なんか思っちゃいましたね」

なるほどな…？

全部が過去形なことに、少し心を痛めた。

でも、俺がAの「はじめて」を2回も奪ったことに、少し高揚した。

末「こんなこと聞いていいかわからんのやけど、なんで好きやなくなったん？」

「え、だって誠也くんそんとき彼女おったやん」

あ、そうやっけか。忘れてた。だってこいつが高校生ってことは、俺いくつよ…？

地味に歳離れとるんやな、俺らって。

「おったっていうか、おるって噂にはなってたから」

末「そんなん言うたら、おまえも大晴と付き合ってるって言われてたやん？」

「付き合ってへんもん」

末「いやまあ、そうやけど…」

「とりあえず、彼女いるって知って諦めたんちゃうかな。というか、そのあとにAぇができたりしてバタついたから誠也くんのこと忘れてました」

末「なんやねんそれ」

皮肉なもんや。

同じグループになって、一緒にいられる時間が増えたほうが、忘れられてしまうんか。