無意識の贈り物（K.K） ページ40
Ken side
小「おまえなんかほしいもんあんの？」
「は？」
今日は昼まで雑誌の撮影があって、そのあと暇やった俺は同じく暇やったAの家でダラダラ。
Aは高校を卒業したあと、すぐ一人暮らしを始めた。そのせいで、遊ぶときはだいたいこいつんち。
俺はだいたい週に2、3回はAの家に行って、漫画を読んだりごはん食べたり。たまに一緒にポーズの練習をしたりもする。
もちろん、何かが起こることなんてない。
今日もベッドに横になりながら漫画を読んでゲラゲラ笑うAを背に、俺は雑誌を眺める。
そしたら、アクセサリーブランドの広告を見つけた。そういやこいつ、もうちょいで誕生日やったなって。
やから聞いてみたのに、なんでキレ気味やねん。
「ほしいもんなあ…ない」
小「まあいきなり聞いたからな」
「逆に小島くんはなんかあんの？」
小「免許とか？」
「あげられへんのよ」
Aが「ない」と答えることは想定内やった。こいつはそういうやつや。遠慮してるのもあるやろうし、ほんまにないってのもあるんやと思う。
アクセサリーはこだわり持ってつけてるみたいやし、服あげるんやったら趣味が似てる大晴からのほうがよさそう。
雑誌から顔を上げたら、さっきからあったはずの花と目が合った。こいつ、花なんて飾る趣味あったっけ。
花かあ。無難っちゃ無難やけど、ちょっと恥ずかしいっていうか。彼氏とかがあげるもんなんちゃうの？
小「A、花好きやったっけ」
「え、うん。わりといつも飾ってるけど？」
小「初めて見たわ」
「どんだけ興味ないんよ」
小「おまえ、花を愛でる心なんてあったんか」
「わたしも残念ながら女の子でしてね…あ、でもそれはもらいもん」
小「え、誰から？」
「大吾くん。早めの誕生日プレゼントやて」
さすがというかなんというか。こういうことできちゃう人よなあ、大吾くん。
「ダリアっていうお花やねん。わたしこれ好きなんよなあ」
ニコニコしながら花の前にしゃがんで、「ほら、かわいくない？」と言うA。
濃い赤のそれが大吾くんからもらったもんやと思うと、ちょっとモヤッとするけど。たしかにAにはよく似合ってる。
「あ！わたしほしいもん思い出した」
小「おお、なに？」
このAのひと言に、俺は何日も頭を悩ませることになる。
聞かんかったらよかったわ。
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作者名：リリー | 作成日時：2021年6月4日 19時
