あなたに夢中。Ⅰ (ページ34)

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無防備のレディ（Y.M）ページ34

Yoshinori side

Aはダンスも歌もお笑いも、とにかく一生懸命。とにかく練習を怠らへんくて、丈くんとか誠也くんとか、デビューした先輩たちも昔から一目置いてる。

やからたまーに女の子であることを忘れそうになったりする…こともあるんやけど。いや、もちろん女の子であることはわかってるけども。

明らかに俺たちより細い手足とか、たまにつけてる真っ赤なリップとか、グッズのTシャツを着ればぶかぶかになったりとか、そういうのを見ると

「あ、女の子なんやなあ」っていちいち気付かされる。

俺たちから「女の子」と思われてることにたいして、本人がどう思ってるかまったく不明。やから俺たちは、表立ってAを女の子扱いせえへんように気をつけている。

あいつ自身が女の子らしさを見せへんのが、素なのか、わざとなのか、わからへんから。

『女扱いしないでよ！』

突然のAの絶叫にも近い訴えに、俺以外のメンバーと、こっちのレッスン室に遊びに来てた大吾と流星が驚いてこっちを見た。

正「あ、みなさん、これ俺の次のドラマの台本読み手伝ってもろてるだけなんで、おかまいなく」

西「びっくりした」

流「歴史が動くシーンに立ち会ってしもたんかと思った」

「ちょっと流星くん、それどういう意味やろ」

このドラマは、バリバリ働くキャリアウーマンが恋をする物語。

俺はその同僚役で、がんばりすぎる彼女を心配するあまり、「女なんだから」と言ってしまい怒らせたシーンを練習中。

Aがおらんときは他のメンバーに練習に付き合ってもらってるけど、年下組にお願いしたら台本にツッコミ入れたりするし、やっぱり女性役は女性にやってもろたほうが気持ちが入りやすいし。

それでこんなふうに台本読みをお願いしてるわけやねんけど、Aの演技が大迫力すぎてちょいちょいびっくりさせられる。

流「それよりさ、さっきからおもててんけど、A顔色悪ない？」

「ええ、ほんまに？ファンデ塗りすぎかな」

流星のこのひと言で、このあとほんまに歴史が動くなんて。

俺たちはやっぱり忘れてたんや。Aが「女の子」であることを。