恋 ９２ ページ42
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ねぇヌナ、覚えてる？
俺に１回だけ怒った時のこと。
いつも「それはいけないことでしょグク」なんて
優しく怒るヌナが、初めて怒鳴った時のこと。
俺が、自分の声とダンスに自信が無くて、
夜中まで練習し続けて、どれだけ止められても
ずっとずっと練習し続けて…。
そしたら上手くなったんだ。上手くなったんだけど。
身体が付いて行けなくなった。
メンタルもズタボロで、身体も動かなくなって、
終いには声も掠れてきて、。
その時のヌナが言った言葉、
今でもちゃんと覚えてるんだよ。
貴『自分を壊して自分を作ろうとすんな！！
そんなのただの自己満足でしょ！！
メンバーもどんだけ心配してると思ってるの！
私達は自分の身を削ってまでアイドルして欲しくて
貴方を選んだ訳じゃないわ！！」
俺、今まで何してたんだっけ。って、
今まで何を夢見てたんだっけ。って、
そう頭に疑問が浮かんだ。
大好きだった歌が、ダンスが、音楽が、
いつの間にか大嫌いになってた。
あんなに怒ってくれる人って、
俺の周りには全然居なかったから、
少しの驚きと、怖さと、
そして、暖かさに触れて大泣きした記憶がある。
その隣でヌナは優しく頭を撫でてくれてたな。
なんとなく母さんに似た暖かさがあって、
余計涙が止まらなくなった。
まだその時は、ヌナに心を開けてなかったけど、
あの出来事が起きてから、
俺はヌナが大好きになった。
最初は、母の面影を重ねていたけれど、
次第にそれは大きくなっていって、
" 恋 " だと気付くのにそう時間はかからなかった。
俺の恩人で、俺の大好きな人。
頭の中にはいつもヌナがいて、
目はいつもヌナを追いかける。
自分でも自覚するほどの重い愛。
アイドルとマネージャー。
そんなこと分かってる。
でも、無理なんだよ。
ヌナが俺を支配してるから。
JK「ねぇヌナ。好きだよ」
貴「グク」
JK「お願い好きになって」
お願いだからさ。
他の人のものにならないで。
貴「ダメだよ」
JK「またそー言うー」
貴「はい早く離してちょーだい」
JK「嫌だねー」
ヌナ、俺、苦しいんだよ。
いっそのことヌナを嫌いたいくらい。
でもヌナはどうしたって消えてくれない。
他のヨジャが俺のところに来たって、
いつもヌナと比べちゃうから。
JK「どうして好きになってくれないの？」
貴「どうしてって、」
こんなの質問しても意味無いのにね。
ただ、またフラレて自分が苦しくなるだけだ。
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作者名：刹那 | 作成日時：2019年8月9日 20時
