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「柚月、それ...」
驚く俺にまず、柚月が返したのは、
「猪狩くん、文章書くの上手いね?堕天、高校生の書く文じゃないよ、もうプロだよ、読みいっちゃった」
良き友達で良きライバル。
文武両道な男女友達として理想的だと、先生からもお好き頂いてる俺たちに気を使ってか、松原先生は、皆に配る前にお互いの小説をくれた。
柚月さんの書いた雨とシトラス。
一匹狼の女の子が全てが嫌になって、雨降る夜の街へ溶けて、別人へと変わる話。
手記形式で、最初が[いつものシトラスを嗅ぎ飽きてきた。]
最後の文は、[ 今日は薔薇を纏って、貴方に忘れさせてもらおう。 ] で手記が終わって、主人公は遊び人と有名な男の元へめかしこんで出掛けたはず。
女の子ならではの武器、香水で最初と最後を締めくくるのが凄くて。それに。
シトラスの香りを纏っていたのは、いつも柚月だった。
「雨とシトラス、結構楽しく書いたからさ、負けたのちょっと悔しくなっちゃった」
「......柚月、俺のあの話が柚月で実現したってことは、柚月の話も...?」
「........ええ、」
悲しく笑う目元に、黒い染みのような涙の様な線が見えた。
「ここまでバレたら隠しても意味ないから言うね、雨とシトラスは私の遺作、別名、これから短期間の人生設計。天使って人を喜ばせるって役目あるんだけど、私どう頑張ったって喜びの基準に達せなくて、堕とされた。堕天使って残酷なの」
そこまで一気に話すと、スッキリした目で空を見上げる。
灰色の雲は、静かに雫を振り落としてきて。
「......こんな風にあと、雨が10回降るまでに条件達成できなきゃ死ぬの。それで思考から解剖されて、不運を分け与える悪魔になる。」
降り注ぐ雨の中、屋上のフェンスの上に座ったままの柚月と目が合って、1、2、3....
「って、柚月とりあえず風邪引くよ、しまえるか分かんないけど羽消して?」
柚月は少し間を置くと、慣れた様子で、羽を体内に取り込む。
それを見届けた俺は、昼休み終わりごろの廊下を進むと、柚月と保健室に飛び込んだ。
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作者名:あやり、。 | 作成日時:2020年6月20日 7時