その一言が 【稲荷崎】

22.処理 ページ23

治side




アカン……




そう思った時には既に遅かった




少しばかり遠くから見てる俺らからは




愛美ちゃんがキレながらも




ポッケからカッターを出すのが見えた




カッターキャーの場合、Aが止めると言っていたが




明らかに自分自身にやろうとしてない




__Aにやろうとしている




そのことに気付いた




止めに入ろうとしたが




Aの手首からは




一瞬、ピッと血液周りにが飛び




その後手首からはポタポタと落ちてきている




俺らはその光景に目を離せず、動けなくなっていた




Aの顔色が悪くなり、




足元はふらつき始め




そして、俺がたった一瞬、瞬きをした時に




Aはそこに倒れていた




事の重大さをやっとの事で理解した俺らは叫んだ






「「「「A‼‼」」」」




愛「…え？、……せ、ん輩………？？」






愛美ちゃんなんか、ひとまずどうでもええ




今(・)、大切なんはAや




侑と俺はAに近寄り傷の処理




愛美ちゃんが叫んだおかげで




校庭で活動していた、サッカー部と陸上部の数名がこの場所に駆けつける




そいつらの、部長に角名と銀が対応




さっさと人を去らせた




その様子を愛美ちゃんは、地面にペタりと座りながら




呆然と見ている






自分の作戦が失敗した事




俺らがこの場にいた事




これからの自分の立場の事




Aを自分自身の手で片付けた事




焦り、不安、高揚、優越感、道徳心、






色々な出来事や感情の処理に




頭が追いついていない様子






侑「お前、」


愛「ﾋ、は、はい」


侑「残っとれよ」






久々に聞くツムのドスの効いた声




こりゃ、ガチ切れやな




まぁ、言うて俺も




こんだけ冷静でいられるのが嘘みたいに体が落ち着いている




いつもならとっくにキレて、怒鳴るか殴っている




まだギリギリ細く短い糸がストッパーの役を果たしている様な感覚




何かきっかけがあれば切れてしまう






俺らは保健室までAを運んでいく




後ろからは愛美ちゃんがついて来ている




Aの怪我は幸い、浅かった




しかしその分長く傷が彫られている




痕にならんとええけど






角「さて、と、

これで一区切りついた訳だけど

あと一つ、残ってるね」


愛「……」


侑「ほれ、見ろ」




ツムはさっきの動画を愛美ちゃんに見せる

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