手のなる方へ ２

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「うまいだろ？A」


笑うエースの手にあるソレは、エース達が飲んでいたような強い酒じゃない
おそらく、私に飲ませるためにわざわざ作ってきたものだろう
いや、わりと味は好みだったけれども


「…私さぁ、まだ痛み止め飲んでるんだわ。酒って多分、飲んじゃダメだと思うんだけど」


朝までは付けていたけれど、邪魔だし出来るだけ動かさないようにするという約束で三角巾を外してしまっていたのが仇となってしまったようだ

忘れてるようなので言っておく、私は一応怪我人だ


「こんな軽い酒、飲んだうちに入らねぇだろ？今日はお前のための宴なんだから、お前が飲まねーと意味ねぇじゃん！！」

「いやそれはそうなんだけどね？そのカクテルの味は好みだったけれども！」

「じゃあいいじゃねぇかー！！」


ガバッと立ち上がると、あろうことかエースはグラスを持ちながら突っ込んできた
その勢いに反射的に避けると、エースはそのままナミュールさんへと激突した

…まさかのこのタイミングで、ナミュールさんが天に召されるとは思いもしなかったんだけど


「… A……俺の酒が飲めねぇとはいい度胸じゃねぇか…」


ゆらりと立ち上がるエースは完全に目が据わっている
これはヤバい
本能的に危険を察知すると、次の瞬間には駆け出していた


「待てぇA！！この酒を飲めえぇえぇ！！」

「待て待て待て！！むしろお前が待て！！知ってる！？私怪我人！！飲まないし走らせるな！！」

「いいから飲めって言ってんだろー！？」

「お前こそ話を聞けえぇえぇ！！」


飲んでる人達を避けながら一目散に逃げる
周りにいた人達は、酒の肴とでも言わんばかりに囃し立てるだけで救助は望めない


「ッ、こういう時こそマルコさんとサッチさんの出番…！」


そう思って彼らを探すが一人は酔い潰れているのか寝ているし、もう一人は楽しそうに談笑していてこっちの様子に気付いていない

つまり、どちらも使いモノにならない


「マジかよこういう時こそ出番じゃん！使えん！！」

「A！待ちやがれ！！俺から逃げられると思うなよ！？」

「思ってないけど今は飲みたくないのー！今度付き合うから今は勘弁！！」

「いーや！今！付き合え！！」

「うるせぇ！この酔っ払い！！」



＿＿拝啓、私の世界の皆様

私はこちらで元気にやっています

こちらにきてから、やたらと叫んでいる気がしますが“それも悪くないかも”と思い始めている私はきっともう末期です

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